「AIゆりこ」が火ぶたを切った超デジタル時代の選挙はこうなる!!
■物理的な制約がないデジタル時代の選挙 それだけではない。従来の選挙を「時間と空間」の制約から解放するデジタル技術の活用は、選挙制度そのものを大きく変える可能性を秘めていると大屋氏は指摘する。 「例えば、『電子投票』の導入です。選挙活動が『時間や空間』の制約を超えられるなら、当然、選挙における投票の仕組みもそこから解放できるはず。 具体的には『有権者が投票所に行って1票を投じる』という従来の選挙制度や『選挙区』という仕組みも、『電子投票』によって大きく変えることが可能でしょう」 どういうことか? 「例えば、『世代別選挙制度』の実現です。日本社会では急激な高齢化で、有権者に占める高齢者の比率が増え続けている、いわゆる『シルバーデモクラシー』の問題が指摘されていますが、将来の日本社会を支える若者の意見を政治に反映するために『選挙で若者が若者の代表を選べる仕組み』が必要だという声があります。 ならば、今のような『選挙区』ごとの形ではなく『各世代』ごとの代表を選んではどうか、という意見があるのです。しかし、例えば『30代の代表』を目指す候補が全国規模で従来のような選挙活動を展開するのは、おそらく不可能ですし、地理的な制約から地域の投票所を基本にした今の投票制度の中で、世代別選挙を実現するのも簡単ではない。 しかし、メタバースなどの電脳空間を活用した選挙活動と、オンラインの電子投票を可能にすれば、実現できるかもしれないのです」 ちなみに、電子投票に関しては、マイナンバーを活用することで技術的にはすでに問題なく導入可能なレベルにあるという。 「それに、電子投票が導入されれば、1票を分けて投票するという、これまでにはなかったアイデアも実現可能になります」 え? 「1票を分けて投票」ってどういうこと? 「例えば、先ほどの『世代別選挙』の発想をさらに一歩進めて、『選挙権をまだ持たない将来世代である18歳未満の子供』の利益を政治に反映したいなら、『その親に追加の1票の権利を与えるのはどうか』という考え方があります。しかし、『その1票を親のどちらが受け取るのか』という問題がありました。 そんなときに電子投票が使えれば、両親がふたりともいる場合、子供の分の1票をそれぞれに0.5票ずつ分割することが可能です。 また、『自分には候補を選ぶだけの十分な政策の理解や知識がないので、信頼できるほかの誰かに選択の一部を委ねたい』という場合、自分の持つ1票の7割、つまり0.7票をその人に譲り、残りの0.3票だけを投じるという方法もある。 このように、最新のデジタル技術を活用することで、これまでの選挙区の設定や、代表者の選出とは違う原理に基づく選挙制度が可能になる。 その結果、従来よりも理想に近い『代表の選び方』につながってゆくのなら、それは、『民主主義にとって極めて大きな進歩』かもしれないというのが、デジタル時代の選挙がもたらすポジティブな側面だと思います」