【評伝】「吉本女性芸人の先駆者」ド派手フリル衣装の今くるよさん 生涯独身も…貫いた後輩愛
女性コンビ「今いくよ・くるよ」で活躍した漫才師の今くるよ(本名・酒井スエ子=さかい・すえこ)さんが27日、膵(すい)がんのため大阪市内の病院で死去した。所属する吉本興業が28日、発表した。年齢非公表としていたが、76歳だった。細身の相方・いくよさん(2015年5月28日死去、享年67)と対照的にぽっちゃりした体形で、容姿のイジり合いと明るい笑いで人気に。京都弁で繰り出す「どやさ!」は名物ギャグとなった。逝去発表のこの日は偶然にも、いくよさんの命日だった。 * * * 【評伝】 ピン芸人、コンビ、トリオを問わず今や存在が当たり前となった女性お笑いタレントだが、吉本興業でその道を切り開いたのは、全国区になった“いくくる”と言って過言ではないだろう。 関係者は「吉本の女性芸人にとっては先駆者。後輩は敷かれたレールを歩くだけで良かった」と感謝する。いくよさんもくるよさんも、全国区の人気を博しても決しておごることなく、とりわけ女性芸人の後輩たちをかわいがった。毎年3月には「ひな祭り」と称し、女性芸人だけの宴会を主催。いくよさんの他界後も、くるよさんは会を続けた。費用を1人で全額負担し、後輩の活躍を鼓舞した。 弟子に吉本・福岡所属の男性コンビ「サカイスト」がおり、男性の後進にも気配りを忘れない優しさの持ち主だった。 師匠が女性(今喜多代さん)だったことも、幸いだったのかもしれない。2人は当初、「横山やすし・西川きよし」に弟子入りを志願していたというが、やすしさんの芸の厳しさもあって実現しなかった。師弟関係になっていれば、歴史は変わっていたはずだ。 くるよさんと言えば、黄色やピンクが目立つフリルのド派手な衣装が有名。舞台中にスカートがずり落ち、それをたくし上げながらしゃべくりを続ける所作も爆笑ネタの一つだった。衣装は1着あたり十数万円とも言われたが、経費と認められず、大阪国税局から申告漏れを指摘されたこともある。独り住まいしていた自宅には、数百着の衣装が残っているという。 経費は落ちずとも、笑いを追求した女性漫才コンビのパイオニア。生涯独身を通したが、多くの仲間に慕われた人生だった。
報知新聞社