「リンゴ病」が急速に流行中…治療薬はなく妊婦はとりわけ注意【クスリ社会を正しく暮らす】
【クスリ社会を正しく暮らす】 2019年を最後に流行が確認されていなかった「伝染性紅斑」が急増しています。伝染性紅斑は小児を中心に見られるヒトパルボウイルスB19による流行性の感染症です。両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれることもあります。 ヒトパピローマウイルスへの感染で男性不妊になる? 微生物学専門誌で研究報告される 10~20日の潜伏期間の後に微熱や風邪症状などが見られ、その後、両頬に赤い紅斑が現れます。 多くの場合、これらの紅斑は1週間程度で治まるのですが、成人では関節痛を伴う関節炎や頭痛などの症状が出るケースもあります。 中でも大きな問題となるのは妊婦の感染です。これまで伝染性紅斑にかかったことのない女性が妊娠中に感染した場合、胎児にも感染し、胎児水腫などの重篤な状態や、流産のリスクになる可能性があるのです。 伝染性紅斑は4~5年周期で流行し、最近では15年、19年に流行がありました。24年第48週(11月25日~12月1日)の定点当たり報告数は0.89、第49週(12月2~8日)では0.92と、直近で流行した19年のピークだった定点当たり1.00に近づいています。 特に関東は、埼玉県3.38、東京都3.00、神奈川県2.23、千葉県2.23と報告数が非常に多い状況です。 伝染性紅斑には治療薬がなく、対症療法が基本になります。そのため、感染予防が大切です。 ヒトパルボウイルスは、感染している人の咳やくしゃみのしぶきを吸い込んだり(飛沫感染)、感染している人の使用した道具を使ったりしてウイルスを口や鼻の粘膜に運ぶこと(接触感染)により伝染します。特に妊娠されている方は普段から、手洗い、うがい、マスクの使用を心がける必要があります。 また、ヒトパルボウイルスはアルコール消毒が無効ですので注意が必要です。流行時期には、感染者や風邪症状のある人との接触をできるかぎり減らしましょう。 (荒川隆之/薬剤師)