満身創痍のロサンゼルス・ドジャース、ポストシーズンに向けたトレードは「詰まった当たりのシングルヒット」? 同地区ライバルは強力補強
【選択肢を増やしながら主力の復帰を待つ】 筆者は7月19日の後半戦開始からドジャースに日々帯同しているが、明らかにドジャースはコマ不足に陥っている。野手ではMVPトリオのうち、ムーキー・ベッツは6月から骨折で離脱しているが、フレディ・フリーマンも三男のマキシマス君が感染症で入院したため、26日の試合前にチームを離れ、「家族緊急リスト」に入った。いつチームに戻れるかは不明だ。 野手ではほかにマックス・マンシー、ミゲル・ロハス、クリス・テーラーらが負傷者リストに入っている。投手陣でも先発で山本由伸、ウォーカー・ビューラー、ボビー・ミラーが離脱している。そんななか、ランドン・ナック、ジャスティン・ロブレスキ、リバー・ライアンら若手を抜擢し、彼らは好投した。しかしながら経験の少ない彼らに、ポストシーズンを任せるわけにはいかない。 ブルペンでもクローザーのエバン・フィリップスが不調で、勝利の方程式が崩壊。30日の試合を含め過去13試合で3度も5点以上のリードを守り切れなかった。30日に打たれたトライネンは「私がいたこの5年間、ドジャースのブルペンはトップクラスだった。しかし現状は厳しいし、最近の2度の失敗のように私がかかわっている部分も大きい。イライラする」と唇を噛んでいる。 コマ不足のなか、ドジャースは29日に野手ではユーティリティ選手のトミー・エドマン、アメド・ロサリオを補強した。 エドマンはスイッチヒッターで、内外野すべてのポジションを守れる。2021年には二塁でゴールドグラブ賞を受賞した。ただし今季は オフの手首の手術から開幕に間に合わず、6月末には足首を捻挫し、まだメジャーで1試合もプレーしていない。 ロサリオは同じく内外野の複数のポジションを守れ、1年前もトレードデッドラインでドジャースに移籍していた。30日にはゴールドグラブ賞4度の名外野手ケビン・キーアマイヤーも加わった。リリーフ投手ではマイケル・コペックを獲得。コペックはもともとドラフト1巡指名選手で、98~99マイル(156~158キロ)の速球を投げ、30.9%の三振率はメジャーのリリーフ投手のなかでも15位だ。しかしながら今季の防御率は4.74で四球が多いのが課題。つまりドジャースはトレードデッドラインで、超大物は獲得できなかったが、コマ不足のチームに新たなコマを余分に追加している。 気がつくのは、負傷者リストに入っているメンバーも含めると、ポジションが重なる選手がとても多くなったということ。計算すると二塁を守れる選手が8人、三塁が6人、遊撃経験者が7人、センターは3人である。 30日、ドジャースのブランドン・ゴームスGMは「これからたくさんの異なる選択肢を試したい。そのうえで、監督やコーチたちと(誰を残すか)話し合っていきたい」と明かしている。 大物を補強できなかった分、選択肢を増やし、競わせ、誰がベストか見極めていく。一方で山本、ベッツ、フリーマンといった主力の復帰は辛抱強く待つ。山本は8月2日に故障後初めてブルペンで投げる予定。ベッツもすでにバットを振り始めている。ブルペンについてもブルスダー・グラテルオール、ライアン・ブレイザー、マイケル・グローブらがそのうち戻ってくる。 今のドジャースはチーム状態がよくない。しかしながらフリードマン編成本部長ならではの、冷静で、理性的な手法で乗りきろうとしている。
奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki