石丸伸二氏の躍進とマスメディアの敗北【東京都知事選挙2024】
ここから米重氏は石丸支持層を、「少なくとも、与党か野党かというくくりで見た時に、野党に期待する素地はない」と分析し、石丸支持層には ・普段は投票から離れている ・政治にそこまで関心がない ・立憲などを(野党第1党だから等の理由で)仕方なく支持している という人たちが集まった結果、政治不信の素地の中で新たなオルタナティブとして石丸候補が集票した、と読み解きます。 米重氏「で、それをドライバーにしたのが、やっぱりYouTube」 水内氏は、不在者投票の出口調査でも石丸氏の票が伸びていたことについて尋ねます。 米重氏は、「期日前と当日、それぞれの出口調査では石丸さんがリードしていたというのが事実」と返答します。 米重氏「ふつうに考えると無党派層のほうが当日出口に、期日前の出口は組織票が多いんです。普通の選挙前の感覚だと小池・蓮舫・石丸が並んでいたときに、石丸氏が強いのはどうしてだろうとなるわけですよね」 調査では、メディアごとの接触時間を聴取しました。すると、政治社会の情報源として長く使われたメディアをYouTubeと回答した人が投票に行った割合が非常に高い傾向があると示しました。 今野氏「いろんなコンテンツがある中で、敢えて選挙のYouTubeを見るわけだもんね」 米重氏「YouTubeを視聴する中で石丸さんに触れて、どんどん石丸さんのファンになっていく、共感していくという現象が選挙期間中にすごい急速に起きた可能性があると思います」
「YouTubeの力で増大し、まるで組織票のように……」石丸支持層が増えた背景
水内氏「今野さんも言ってたけど、アルゴリズムで、石丸さんがYouTubeでいっぱい出るようになったら、よけい相乗効果になるのかなあ」 米重氏は、フィルターバブル※1やエコーチェンバー※2という言葉を紹介し、「アルゴリズムによって、自分の興味関心に沿った情報が出てくるようになった。その結果、みんな見ているもの、聞いているものが違うようになり、みんな脳みその中身が違う『一億総メディア時代』と呼ばれる状態ができ、ソーシャルメディアにシフトした状態になった」と説明します。 ※1 ネット利用者個人の検索やクリックの履歴を学習することで、ユーザーの意志にかかわらずパーソナライズされた情報のみを表示し続けた結果、ユーザーが自分の考えや価値観が「バブル(泡)」の中に孤立した情報環境になること ※2 SNS上で自分と似たような価値観や考え方のユーザーをフォローすることで、同じような情報ばかりが流通する情報環境になること 米重氏は、もともとYouTubeで力のある「コンテンツ」だった石丸氏が、「YouTubeの力で」増大していった流れを、次のように指摘します。 ・選挙戦で本人が配信を行う ・いろいろなYouTuberが中継、切り貼りなどで編集、発信する 石丸氏のコンテンツがさらに増える ・さまざまな形でレコメンドされ、拡散される ・石丸氏に興味関心があると見なされ、どんどんコンテンツが紹介されていく ・共感度が上がり、投票に行こうとする強い意志を抱くようになる この結果、「まるで組織票のように、期日前から選挙に動員された」と米重氏は振り返ります。 米重氏「とくに都心部、区部での石丸さんの集票力は目を見張るものがあったと思います」