アメリカの「UFO」は西部地域で多く目撃? 真面目な研究から見えてきたもの
皮肉なことに、UFOと軍事機密が関連しているという一番分かりやすい例はアメリカで発生しており、いわゆる「ロズウェル事件」として知られています。ロズウェル事件は、宇宙人の乗り物と関連付けられるまでに数十年という時間差があるなど、リアルタイムでUFOと軍事機密が関連付けられた訳ではありませんが、一方で当時の極秘作戦 (ソ連の核実験の監視) に絡んでいたことから正体がごまかされて説明された背景もあるため、最も著名な話としてしばしば例示されます。 ただし、このような流れに対して「アメリカ政府がUFOの存在を認めた」という主旨の報道や反応があったように、UFOという用語のイメージと実態の齟齬は大きな問題となっています。これは同時に、研究者が「UFOの研究をしている」と自己紹介した時の反応が容易に想像されるように、UFOに対する科学的研究が躊躇されることにも繋がります。国防や軍事に関連したものばかりではなく、例えば球電 (※) のような極めて珍しい自然現象がUFOとして目撃されているのかもしれません。もしもUFOという言葉のイメージが原因で目撃情報が分析されなければ、珍しい自然現象に関する研究も滞ってしまうでしょう。 ※…通常は雷雲活動と関連付けられる、大気中を発光しながら移動する球状の物体。その正体はよくわかっていません。
■UFOの目撃情報には地域的偏りがあると判明
Medina氏ら3氏は、UFOの目撃情報に地域的な偏りがないかどうか、あるとすればその原因は何かを探る研究を行いました。個々のUFO目撃情報に信頼を置けるかどうかは極めて不明確ですが、仮に全ての報告が全くのデタラメで信用できないという場合には、目撃情報に地域的な偏りはほとんど現れないでしょう。その一方で、UFOは確かに目撃されているものの、その正体が目撃者にとって分からないものであれば、何らかの地域的な偏りが生まれる余地があります。 今回の研究では、「全国UFO報告センター (NUFORC; National UFO Reporting Center)」に2001年から2020年にかけて報告された12万件以上のUFO目撃情報について、その地理的な分布を分析し、説明可能な偏りの原因があるかどうかが検証されました。NUFORCは非営利組織が運営するボランティアベースの団体であるため、目撃情報が信頼できるかどうかは未知数です。とはいえ、NUFORCでは金星やスターリンク衛星のような簡単に説明可能なものや、デマや捏造である可能性のある情報については可能な限り排除しています。また、地理的分布で目撃情報の信頼性を測るにはこれくらいのサイズのデータセットが必要となるものの、他に研究利用が可能なUFO目撃情報のデータがないという問題もあります。