アメリカの「UFO」は西部地域で多く目撃? 真面目な研究から見えてきたもの
「UFO」というとオカルトか何かのイメージが強いかと思われますが、実際には国防や科学研究といった真面目な場でも議論の対象となります。ただし、UFOという用語に付きまとうイメージから、科学的な研究は敬遠される傾向にありました。 今日の宇宙画像 ユタ大学のR. M. Medina氏とS. C. Brewer氏、およびアメリカ国防総省のS. M. Kirkpatrick氏は、アメリカ合衆国で目撃された12万件以上に渡るUFOの目撃情報を分析し、UFOが現れる場所には地域的な偏りがあることを発見しました。特に西側地域は、UFOが目撃されるホットスポットです。この偏りは、目撃情報のほとんどが実際に何らかの飛行物体を目撃している可能性が高く、全くの捏造やデマはそれほど多くはないことを示唆しています。個々の正体は相変わらず “未確認” であるものの、その地域の特性から航空機である可能性が高いかもしれません。
■UFOは真面目な科学研究の対象
「UFO」という用語を聞くと、多くの人は「宇宙人が地球へやってくるのに使う宇宙船」であると思い浮かべるでしょう。しかし、本来UFOとは “Unidentified Flying Object (未確認飛行物体)” の略であり、正体が判明していない空中の物体に割り当てられる航空軍事用語です。UFOという言葉に超常現象的なイメージが定着していることや、光などの物体ではない自然現象に由来することもあることから、2020年頃からは代わりに「UAP」という用語が使われるようになってきました。これは “Unidentified Anomalous Phenomenon (未確認空中現象)” の略です。ただ、日本の一般向けにはまだあまり馴染みがない用語であることから、本記事では元の文でUAPとされた部分を含めて以下「UFO」と呼称します。 実際のところ、UFOの正体を探ることは重要です。UFOの大半は金星や人工衛星など、容易に説明可能な現象の誤認であると考えられていますが、一部にはステルス機や偵察機のような軍事的に公にされていない物体が含まれているかもしれないからです。実際、2023年にアメリカやカナダ上空で未確認の高高度気球が目撃され、最終的に撃墜される事件が発生しましたが、これは中国が偵察用に上げた気球であるとアメリカ政府は主張しています。 このような国防上の背景から、2020年にアメリカ国防総省は「UAPタスクフォース」を立ち上げ、UFOの正体を探るための本格的な情報分析を開始しました。アメリカのUFOに関する分析研究は、現在では国防長官府が管轄する「全領域異常解決局 (AARO: All-domain Anomaly Resolution Office)」が担当しています。なお、今回の論文の著者の1人であるKirkpatrick氏は、2023年12月までAAROの初代所長を勤めており、2024年1月にはScientific American誌に「アメリカ政府のUFOハンターとして、UFOと宇宙人を結びつける証拠は見つからなかった」とする論説を掲載しています。