南西諸島の防衛強化へ奄美に新たな訓練・補給拠点の開設検討 防衛省が新年度予算概算要求に事前調査費計上
防衛省は南西地域の防衛体制を強化するため、奄美群島や沖縄県に訓練場や補給拠点の新設を検討している。島しょ部の現地部隊などが活用する運用基盤を拡充し、抑止力・対処力を高めたい考えだ。防衛政策に詳しい識者は「南西シフトは入り口の段階。今後は質と量を充実させていくことになる」との見方を示す。 防衛省は2025年度予算の概算要求に事前調査に関する経費を盛り込んだ。「特定の候補地は想定せず、各島で幅広く調査する」とし、新たに活用可能な土地がないかを調べる予定だ。 中国の海洋進出を受け、日本は南西諸島の防衛力を強化する「南西シフト」を進めている。16年から23年にかけ、与那国島、奄美大島、宮古島、石垣島に陸上自衛隊の駐屯地を新設。奄美には警備部隊や地対空、地対艦誘導弾部隊、電子戦部隊などを配置した。 運用基盤の拡充はこうした部隊が使う訓練場や補給拠点を想定している。元陸将補で日本大学の吉富望教授(安全保障)は「防衛力強化は部隊を置いて一段落ではない。質を高めるために訓練のほか、弾薬や燃料、装備品などを保管する補給拠点、島しょ間の輸送力、通信ネットワークが重要になる」と指摘する。
同省によると、南西地域には訓練場がほとんどなく、大分・日出生台演習場(約4900ヘクタール)など本土で実施している。補給拠点についても、九州補給処(佐賀)の支処を沖縄訓練場敷地内に新編する予定だが、他の離島にも適地がないか可能性を探る。担当者は「運用基盤の拡充は周辺地域への影響などを検討する必要がある。実際に整備するかは事前調査を踏まえての判断になる」とする。 吉富教授は「国民保護まで考えると、現在配置する部隊の勢力では足りず、量的な増強も必要になる。防衛力の強化は地元と信頼関係を構築し、理解を得ながら進めなければならない」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島