第94回選抜高校野球 長崎日大、静かな闘志 23年ぶり出場決定 一丸で活躍誓う /長崎
<センバツ甲子園> 23年ぶりのセンバツだ――。28日にあった第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)の選考委員会で、県勢の長崎日大(諫早市)のセンバツ出場が決まった。吉報を受けた選手たちは「チーム一丸となって日本一を目指す」と夢舞台での活躍を誓った。大会の組み合わせ抽選会は3月4日にあり、同18日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する。【長岡健太郎、中山敦貴、杉山恵一】 午後4時前、長崎日大の理事長室の電話が鳴った。「ありがたくお受けいたします」。池内一郎校長は受話器を置くとグラウンドへ急ぎ、センバツ出場の吉報を選手たちに告げた。喜びを爆発させるかと思いきや、神妙な面持ちで話を聞く選手たち。池内校長に「喜んで」と促され、ようやく笑みを浮かべた。 「ほっとした」。おぼろげだった夢舞台への出場が確かなものとなり、選手たちは口をそろえた。昨秋の九州地区大会準決勝で、チームは強打を誇る九州国際大付にコールド負けを喫したからだ。河村恵太主将(2年)は「センバツに出場できなかった時、落ち込んだ仲間にどう声を掛けるかばかり考えていた」と明かす。 九国打線に打ち込まれた悔しさをバネに練習に打ち込んできた二枚看板の一人、右腕の種村隼投手(同)は「制球力をさらに磨き、テンポの良い投球で全国の強力打線を抑えたい」。百武伸選手(同)は「悔いを残したからこそ冬も厳しい練習に耐えられた。センバツでは自分がチャンスを作り、打点を稼ぎ、バックスクリーンに特大の一発をたたき込む」と早くも闘志を燃やす。 グラウンドにはファンの姿もあった。同校の元事務職員で、50年以上野球部を応援し続けてきた「私設応援団長」の川瀬進さん(77)は「何とか彼らの夢がかなってほしいと願っていた。自分のことのようにうれしい」と喜んだ。 昨夏、選手の中からマネジャーに選ばれ、「チームの核」として練習メニューの指示などに当たってきた緒方伊吹さん(2年)は「甲子園に出るチームだからこそ、あいさつなど当たり前のことを当たり前にできるチームでないといけない」と気を引き締めた。 同校野球部OBで、就任4年目の平山清一郎監督は「感謝の気持ちを忘れず、飾らず長崎日大らしい野球がしたい。チーム全員で、一つのボールをしっかり追いかけていく」と大舞台を見据えた。 ◇平常心で果敢に 地元が期待寄せる 県高野連の山口千樹会長は「九州大会での投打にわたる安定した戦いぶりが評価されたと思う。甲子園でも気負わず平常心で、はつらつとした試合を見せてほしい」とのコメントを出した。諫早市の大久保潔重市長は「チームワークで全国の強豪に果敢にチャレンジし、一つでも多くの勝利を地元に届けてもらいたい」と激励した。 ◇「躍動感ある写真撮れた」 学校新聞部員3人、大ニュース速報取材「緊張」 ○…長崎日大のグラウンドでは、同校の新聞部員3人がセンバツ出場決定の「速報」を出すため、カメラを片手に選手たちを見守った。「日大新聞」は新型コロナウイルスなどの影響で約2年ぶりに復刊を果たしたばかり。部員は全員1年生だ。山崎琴葉部長は「大きいイベントの取材は初めてだったので緊張したけど選手たちが喜んでいる躍動感のある写真を撮れて良かった」と話し、早速編集作業に取りかかっていた。 ◇勝負強い打撃誇る 安定の種村・川副両投手 点を取られたら取り返す、勝負強い打撃が持ち味だ。昨秋の九州地区大会1回戦では八回に一挙10点を奪い、最大5点差をはね返してコールド勝ち。準々決勝も七回の集中打で佐賀商を突き放した。県予選を含む計8試合で62得点を挙げ、通算チーム打率は3割5分超と破壊力抜群だ。 投げては右腕エースの種村隼投手(2年)が流れを作り、左腕の川副良太投手(同)がキレのある変化球で好救援するなど二枚看板には安定感がある。ただ、九州地区大会準決勝では九州国際大付(福岡)の強力打線に打ち込まれ、七回コールド負けを喫した。 「あの敗戦を忘れるな」。選手たちは九州国際大付に大敗した悔しさを胸に、更なるレベルアップを目指して練習に打ち込んでいる。 〔長崎版〕