これって違法? 私たちが選挙で陥りかねないネット利用の落とし穴 #みんなのギモン
9人が争った衆議院東京15区の補欠選挙。ネットを使った選挙戦も展開されました。今、ネットは選挙に欠かせないツールになってきた一方で、使い方をひとつ間違うだけで私たち有権者も違法となる怖さがあります。ルールは複雑で現役の議員秘書ですら「理解できない」との声も。何がセーフで何がアウトなのでしょうか。
■メールはNG でもXはOK・・・
4月の衆議院東京15区補選で、ある政党からこんな呼びかけがありました。 「東京江東区のご親戚や知人に『○○○○』への投票をお願いしてください。その際、メールや手紙は公職選挙法違反になります。X、FB、Instagram等のSNSやLINEは違反になりません」 有権者同士で候補者への投票を呼びかけてほしいとの内容ですが、メールや手紙はダメでSNSならOKだといいます。 よくわからない理屈だと思いきや、公職選挙法で定められたルールで、フェイスブックなどのSNSやLINE、YouTubeなどを含む「ウェブサイト等」と「電子メール」に分類して規定しているのです。 ネットを活用した選挙が解禁されたのは2013年。なぜSNSはOKでメールはダメなのでしょうか。総務省の担当者に聞いてみました。すると答えはこうでした。 「一般論として、ウェブサイトなどの利用は、選挙に関して必要な情報を随時提供できるようにし、有権者のより適正な投票行動に資することができると考えられます。一方で電子メールは密室性が高く、誹謗中傷やなりすましに悪用されやすいなどのために制限があると考えられています」
■有権者が罪に問われる可能性・・・セーフ?アウト?
私たち有権者も、ネットの使い方をひとつ間違うだけで違法となる怖さがあります。では有権者にはどんな落とし穴があるのでしょうか? ネットを活用した選挙に詳しい明治大学公共政策大学院の湯淺墾道教授監修のもと、ケースを挙げてみました。 《ケース1》 有権者Aさんは、ある候補者の個性的な選挙ポスターが目にとまり、そのポスターをスマホで撮影し、「こんな面白い格好をして写っている候補者がいるよ」と書き添えてeメールで友人に送った。 →セーフだと考えられます。候補者への支持や投票を呼びかけず、たんに服装などに「面白い」という興味関心を示しているだけであれば選挙運動ではないと捉えることができます。ただし「一票を!」とか「勝たせて」などといったこの候補者への投票を促すような言葉が入ればアウトになる可能性が高いです。投票を促す行為でも、eメールでなくLINEでやるのはOKです。(公職選挙法第142条の3、第142条の4、第243条) 《ケース2》 有権者Bさんは、政党から送られてきた「○○候補をどうかよろしくお願いします」というeメールの文面を友人に転送し「よろしくね!」と添えた。 →アウトになる可能性があります。メールの転送であっても、特定候補者への投票を呼びかけていると取られる可能性が高いです。(公職選挙法第142条の4、第243条)これもSNSやLINEを使って友人に共有して投票を呼びかける場合はアウトにはなりません。 《ケース3》 Cさんは17歳。ある候補者が駅前で街頭演説しているのを見て、自分は有権者ではないから気軽な気持ちでその様子を動画共有サイトに投稿した。 →アウトになる可能性が高いです。インターネットを含め18歳未満の選挙運動を禁止する公職選挙法に違反していると指摘される可能性があります。(公職選挙法第137条の2、第239条)。街頭演説には候補者の主張が入っているため、それを広めることは選挙運動に加わっていると捉えられる可能性が高いです。18歳未満は自分で選挙運動のメッセージをブログなどに書いたり、選挙運動の様子を動画共有サイトなどに投稿したり、他人の選挙運動メッセージをSNSなどで拡散させることもできません。