<エジソンの時代から変わらない発電方式>エネルギー、発電で200年間大きなイノベーションは起こらなかった
2024年の夏は10年に1度の酷暑と言われており、エアコンの使用などによる電気代の上昇が懸念されていたため、政府は8月から電気代・ガス代の補助金を一時的に再開する予定だが、場当たり的な政策に国民からの批判の声も聞かれる。日本が本当に国際的な競争力をもった電気料金を実現するためには、電力政策の早急な見直しが必要となる。本記事では、知っておくべき電気にまつわる知識を、さまざまな角度から解説する。 *本記事は『間違いだらけの電力問題』(山本隆三、ウェッジ)の一部を抜粋したものです。 【図解】火力(汽力)発電の仕組み
発電効率はなかなか上げられない
エジソンの発電機は石炭を燃料としていたが、石炭を燃やしてどのようにして発電するのだろうか。燃料を燃やして水を水蒸気にする。その水蒸気でタービン(羽根車)を回し、タービンにつながっている発電機が電気を作る(図表1)。水蒸気の力を利用する汽力発電と呼ばれる、火力発電の方式の一つだ。今の発電方式もエジソンの時代とまったく変わっていない。 もちろん、エジソンの時代と比較すれば、設備の改善があり燃焼効率は上昇しているが、今でも通常の火力発電であれば、使用したエネルギーの半分以上は熱として失われる。熱を利用する設備が近くにあれば熱の有効利用が可能だが、そんなケースは多くない。 使用する燃料が、石炭から石油、天然ガスと広がったことによりコンバインドサイクルという新しい発電方式も登場した。図表2の通り、まずガスタービンを回し、余った熱で水蒸気を作りタービンを回す仕組みだ。この方式の最新設備であれば発電効率は60%になる。コンバインドサイクルで使用する燃料はLNGが主体だが、石炭を利用する石炭ガス化複合発電も実用化されている。
原子力発電も登場したが、原子力の熱で水蒸気を作りタービンを回すので、水蒸気を作る燃料が火力発電と異なるだけだ。燃料を利用する発電の方式は石炭を利用していたエジソンの時代から変わっていない。地熱による発電も火山の近くの地下にある蒸気を利用し、タービンを回す。 水力発電の方式もエジソンの時代から変わらない。水の位置エネルギーを利用し、水車を回し発電する(図表3)。風力発電は水でなく風の力で発電機を回す。エジソンの時代になかった発電方式は太陽光発電だ。光のエネルギーを電気に変え発電する(図表4)。