2025年の注目ファッションはアジアの純真【前編】 カザフスタンの“フォークロア×ストリート”
個人的注目ブランド3選
その好例が「ネクスト・デザイナー・フォワード」の優勝者である「キミン(KIMMIN)」と、ファイナリストの一人「マリコ(MARIKO)」です。「キミン」のデビューコレクションは、廃棄布やデッドストックの古着をアップサイクルして、カザフスタンの文化である遊牧の精神をストリートスタイルに落とし込みました。一方、アルメニアにルーツを持つマリー・ハイラペティアン(Marie Hayrapetyan)が手掛ける「マリコ」は、アルメニア・シュニク地方を象徴する花をモチーフに、この国の伝統的な編み物と織物、そして自然風景をスーツやシャツといった現代的なウエアに反映させています。
また、ロシアと韓国出身のクリエイティブ集団による「フズ(FUZZZ)」は、今季のアルマトイで最も評価を得たブランドです。わずか80gのウィンドブレーカーや、ツバが折りたたみ式のキャップなど、スポーツウエアから引用したテクニカルな高機能素材を多用し、ストリートとミリタリーを交差させた日常着で構成。モデルが怒ったように闊歩したり、互いにぶつかり合ったりする印象的なショー演出に加え、デザイナーの友人で韓国のアイドルグループWINNER元メンバーの歌手ナム・テヒョン(Nam Tae-hyun)が来場するなど、セレブリティーゲストを巻き込んだ話題作りにも国際的なブランドを目指す野心を感じました。
地域に根ざした、ユニークな作り手が数多く存在するのがカザフスタンです。遊牧民族の伝統と、若者らしい視点で捉えたストリートウエアがミックスした新感覚のスタイルに刺激を受けました。一方で、イベント会場では“自然体”や“ノンシャラン”といったムードとは無縁のゲストが集い、一張羅にメイクもヘアもしっかり決め込んだの気合いの入りっぷりを眺めるのが楽しみの一つ。自己表現する喜びが全身から溢れ出るゲストたちから、ファッションが英気を養い自信をもまとわせる、その力を思い知りました。カザフスタンはまだまだ発展途上ではあるものの、デザイナーも市場も経験を積んで成熟し、引き算を学んで洗練されてくれば、フォークロアとストリートを掛け合わせた新世代のスタイルが世界へと広がる可能性を秘めています。少し時間はかかるかもしれませんが、今後の発展に期待しています。