かつては“裏切り者扱い”も、出戻り社員「アルムナイ採用」が増えた切実な事情
近年、アルムナイ採用を取り入れる日本企業が増えています。アルムナイ(alumni)とは「卒業生」の意味で、退職した元社員(アルムナイ)を再び採用することです。今回は、アルムナイ採用の現状と功罪を検討しましょう。 ■かつてはご法度だったが… アルムナイ採用のやり方は企業によってまちまちですが、人事部門が退職したアルムナイをプールし、同窓会組織を作るなど関係を保ち、求人募集を出して採用します。公式に制度化している場合も、人事部門担当者が非公式に実施している場合もあります。
かつて終身雇用や家族主義的経営が一般的だった時代に、会社を辞めた社員は“一族の裏切り者”で、“出戻り”はご法度でした。 どうして近年、多くの企業が積極的にアルムナイ採用をするようになったのでしょうか。大手企業の人事部門関係者に取材したところ、さまざまなメリットを指摘していました。 「当社では、人的資本経営を最重要課題として推進しています。現社員だけでなく、当社の教育訓練によって成長したアルムナイも、当社にとって重要な人的資本です。チャンスがあれば復帰して、当社の発展に貢献してほしいと門戸を開いています」(エネルギー)
「多くのアルムナイは、当社を離れていろんな経験を積み、一回り成長します。そういう優秀な人材が当社に復帰し、リーダーとして経営改革を主導してくれることを期待しています」(消費財) 「普通の中途採用では、これだ! と思って採用しても、外れがあります。その点アルムナイの場合、能力や人間性を熟知しているので、外れはありません。アルムナイ側も会社のことを熟知しているので、復帰したら即戦力でバリバリ働くことができます」(輸送機)
ここで、「当社でも対外的にはいろいろとカッコいい説明をしていますが、結局は金です。採用コストがかからないというのが、何と言っても大きい」(小売り)という率直な意見がありました。 いま空前の人手不足で、大手企業でも中途採用では苦戦しています。転職エージェントを通すと、採用した社員の年収の30~40%もの仲介手数料を支払う必要があります。アルムナイ採用なら、仲介手数料も採用後の導入教育も不要で、とにかく安上がりです。