わらび餅ドリンクが今ブーム!気軽に楽しむ「ネオ和菓子」としてZ世代が注目する理由
【あの食トレンドを深掘り!】日々生まれている食のトレンド。なぜブームになったのか、その理由を考えたことはありますか? 作家・生活史研究家の阿古真理さんに、その裏側を独自の視点で語っていただきました。 ◇ ◇ ◇
わらび餅ドリンクが流行中!
タピオカミルクティーの大流行を強制終了させたコロナ禍初期、第2のタピオカミルクティー狙いと思われる、わらび餅ドリンクを町で見かけるようになった。「そんな便乗、続くの⁉」と懐疑的だった私の予測は見事に外れ、わらび餅ドリンクの流行は着々と広がっていく。そして町にすっかり人通りが戻った今、しぶとく生き残ったタピオカミルクティーと仲良く共存しているのである。そこで、今回はわらび餅ドリンクがなぜ人気なのかについて、掘り下げることにした。 もともと私は、わらび餅が好きである。10代の頃、スーパーでわらび粉を買ってきて何度か自作したこともあるぐらいだ。しかし、わらび粉に水を加えて加熱するうちに、かき混ぜるへらがどんどん重くなるうえ、完成したわらび餅はザラザラ、ボコボコになってしまい、その食感が味を損ねていた。また、20代後半の頃、大学生の友人が連れて行ってくれた奈良市の商店街内で2階にあったカフェでいただいたわらび餅が、まるで氷みたいに冷たく爽やかな味で忘れられなかったのに、肝心の店名と場所の記憶が定かでなく、その後何度奈良へ行っても見つけられなかったなどの思い出がある。それだけに、「わらび餅をドリンクにしちゃって飲み込んだら、味わう暇もないではないか、邪道だ」などと反発したくなってしまうのだ。というところで、流行の検証を始めたい。 タピオカミルクティーに触発されてわらび餅ドリンクを考案した店は、いくつもある。『アットダイム』2022年8月31日配信「甘さすっきりの新感覚スイーツ『飲むわらび餅』が人気の理由」によると、2019年8月に東京・巣鴨で「わらび餅もとこ」が開業し、「わらび餅ミルクティ」を提供。同年12月にはスターバックスコーヒーが「あずきなこ わらびもち 福 フラペチーノ」の提供を開始した。 ブームにしたのはわらび餅専門店「とろり天使のわらびもち」で、2020年8月に大阪・中崎町で1号店を開業し、わずか1年10カ月で100店を超え、日本の外食チェーン店の最速記録を更新している。 希少な本わらび粉を使用する同店ではもともと、柔らか過ぎるので箸を添えてわらび餅を提供していた。2021年10月7日配信の『神戸新聞NEXT』「これストローで飲めるじゃん!女子高生考案の『飲むわらびもち』人気爆発 次のタピオカに?」によると、同チェーンがわらび餅ドリンクを開発したきっかけは、女子高生アルバイトの発言。「やわらかすぎるからストローで飲めるのでは」と言い出したことをきっかけに開発に取り組み、牛乳やホイップクリームなどを加えて混ぜ合わせた。この時点では、ミルクティー、抹茶、黒蜜のフレーバーを提供していた。オーソドックスな味からか、年配の人や男性客にも好評だと記事にある。 『日経X TREND』の2023年5月19日配信記事「『飲むわらびもち』が第2のタピオカに 数年で150店以上に」によると、この頃になると同チェーンは、地域によって特色のあるドリンクを提供している。水戸店は水戸メロン、イーアス沖縄豊崎店は紅芋などのフレーバーがあるようで、全店舗のうち9割以上にオリジナルメニューがあるという。それは客の好奇心を掻き立てる。フランチャイズ店の裁量が大きいことも、出店が加速する要因だろう。 流行を広げるうえで、店の数は重要である。タピオカミルクティーは台湾から上陸した大手チェーンのほか、日本発のチェーン、個人店が群雄割拠し全国にブームが広がった。ロシア料理、中東菓子のバクラヴァのブームが今一つ盛り上がらなかったのは、店の数が少ないからである。その意味で、けん引するチェーンがあり、他にも出店があるわらび餅ドリンクが広がったのは当然かもしれない。