広島じゃけん《お好み焼き》(4)“黒”に“白”に“3D”…ニュータイプ出現
“うまいもん”の宝庫、広島。なかでも、“お好み焼き”はその代表格だ。地元のソウルフードの地位にとどまらず、今では全国で広く支持されるようになった。 広島のお好み焼きは、いつどのようにして誕生し、どのように広まっていったのか。その歴史や足取りをたどりながら、魅力を紹介していく。
良くも悪くも、自他共に認める「かなり保守的な街」広島市。お好み焼きの変化は当然のように市外から始まり、少しずつ浸透しつつある。 2016年現在、広島市内でお好み焼き8店舗を運営する「としのや」はその代表だろう。その看板メニューの“府中焼き“はどういうものか。としのやを運営する(株)ジブランドの吉岡忠晃氏(42)に話を聞いた。 「私の出身でもある広島県府中市でもお好み焼きは数多くありますが、その特徴はスライスした豚バラ肉を使わずミンチ肉を使うところと、モヤシを使わない事。当店の黒焼きは麺をおよそ20分鉄板で焼きますが、ミンチ肉の脂で麺がパリパリになり、モヤシを入れないので水気も少ないのが特徴です。」 食べてみると確かに表面がパリパリで、広島市内のお好み焼きの特徴である“上に乗る卵”が見あたらない。 「卵はそばの下に入っています。そうしないと麺がふやけてしまうので。」 麺の焼きを抑えて卵を上に乗せる“白焼き”も最近は人気だそうだが、なんといっても広島市で府中焼きを有名にしたのは、パリパリの麺の食感を極限まで追求したといっていい“黒焼き”だろう。作り話でなく、実際にヘラで食べる時に麺が弾けて飛ぶくらい、焦げる寸前までパリパリに焼いた実に面白いお好み焼きだ。 府中市といえば家具と桐箱製造で全国的に有名な職人の街だが、そのうち府中焼きも知られるようになるかもしれない。
広島県の北東部にあり米作地として有名な広島県庄原市。年間40万人以上が訪れる国営備北丘陵公園のあるこの街で、庄原法人会青年部会の有志と県立広島大学庄原キャンパスの大学生が中心になり、地元活性化の為に新しいメニュー開発に取り組んだ。 そして平成22(2010)年に地元の七夕祭りでデビューしたご当地グルメが“庄原焼き”だ。広島のお好み焼きを大胆にアレンジしたとも言えるそれは、ソバの替わりに御飯を入れ、お好みソースの替わりにポン酢を使うなど、米どころ庄原をアピールしたもの。翌年にはB-1グランプリの広島版ともいえる「広島てっぱんグランプリ」の第2回大会で見事優勝し、県内でも一躍有名になった。(ちなみに初代王者は府中焼き)。 庄原焼きの特徴はもう一つ、定義が「御飯とポン酢を使う」ことだけなので、市内で現在8店舗が庄原焼きを提供しているが、御飯には焼きおにぎり、バターライス、豚キムチチャーハンなど様々。中には納豆やチーズを入れるお店もあり、ポン酢ソースも多くの店が自家製で店ごとに全く違う味と見た目で地元のファンに愛される。