「あのお金はどこへ消えたんだ?」老後の2000万なんて余裕→76歳で借金300万。自分たちを「小金持ち」と信じていた老夫婦の「悲惨すぎる誤算」
人生100年時代といわれる昨今、厚生労働省が発表した令和4年度の日本人の平均寿命は男性が81歳、女性は87歳だった。 平均寿命が長くなったぶん、老後の生活に向けた資産準備は大きな課題だ。 2019年に発表した金融庁のワーキング・グループの報告書では、老後20~30年間で約2,000万円が必要だという試算を出して、日本国中を議論の渦に叩き込んだ。 この金額は、あくまでも高齢夫婦無職世帯の実収入から出した結果であるが、いかに老後のための資産形成が大切か気づかされる結果だろう。 60歳または65歳で定年退職を迎えると給与収入が無くなるため、年金で足りない部分は貯金を崩して補わなければならず、退職前から資産形成をおこなわないといけないと多くの金銭トラブルに精通している、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は言う。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「義両親は現役だった頃は羽振りがよかったので、金銭的にお世話になっていたんですが......。定年後、あっという間に退職金を使い果たして、私たち夫婦に金銭を要求するようになったんです」 そう話すのは山下陽子さん(仮名)。 義両親との金銭トラブルで頭を抱えている、地方在住の主婦だ。 陽子さん一家は3歳年上の夫と、高校生と中学生の息子がいる計4人。 夫の実家から車で20分の距離のアパートに住んでおり、義両親との仲は良好で子どもたちをとても可愛がってくれていたようだ。 長男を出産後は、義実家のサポートを受けながら育児をしていた陽子さんだが、仕事との両立が難しいため正社員で働いていた会社を退職し、自宅近くのスーパーのパートタイマーとして働いた。 子どもが大きくなるにつれ教育費も比例し、次男が小学3年生に進級した40歳の頃に思い切って正社員への転職活動を始めた。 懸命な転職活動の末、建築関連会社の正社員採用が決まったのだった。 「これから部活や塾にかかるお金、大学費用も学資保険以外で貯めないといけないし、県外の大学へ進学したいというなら応援してあげたい。夫の一馬力だけでは家計が厳しいので、正社員にチャレンジしました。子どもも大きくなったし、もともと外で働くのは好きです」 キャリアにブランクはあったものの、大学生時代に取った資格やパート歴、採用してほしいという熱意が評価され、あっという間に正社員採用が決まったようだ。 職場は自宅から車で15分、年収でいうと300万円だが、パートの給料と比較すると約2倍の差があった。 現在も同じ会社に勤めており、給与や有休の取りやすさや人間関係を含め、とても良い会社だと話す。 子育てが落ち着いたから、40歳からはキャリアと学費を積み立て、子ども達が巣立ったら老後の資産形成をしていこうー。 そう考えていた陽子さん夫婦の人生プランは、義両親が定年退職したあとから徐々に狂い始めたようだ。 「夫の両親は共働き。義母は看護師、義父は県内企業の部長まで上りつめて定年したんです。夫婦ともに稼ぎはよかったので、私たちの結婚式費用を負担してくれたり、子どもが生まれてからは洋服やおもちゃのプレゼント、習い事費を出してくれたりしていました。義両親は仕事が忙しかったので、孫の世話を見てもらうというよりはお金の援助をしてもらってました。当時はとても助かりましたけどね」 また、夫には自由奔放な性格の弟が一人いて、家族3人で隣の市で暮らしている。 子どもたちの年齢も近いため、週末はよく弟夫婦と一緒に公園へ行っていたようだ。 息子2人が結婚した後は夫婦で3か月に1度国内旅行へ出かけ、お酒が好きなので週末は行きつけの居酒屋へ通う義両親。 交友関係が広いため、交際費も多かった。 「良い暮らし」をしている義両親に対し、子どもが巣立った50代以降は自分たちもあんなふうに過ごしたいと思っていた。 そして義両親がそれぞれ60歳になり定年退職を迎えたあと、変わらない生活スタイルと金銭感覚に徐々に疑問を抱くようになったと陽子さんは語る。 「義両親は今76歳なので、年金を60歳から受給していました。退職金はそれなりにあったようで、それはそれは羽振りが良かったですよ」 続けてこう話す。 「退職金を貰ったあとは大丈夫かな?って心配するほどでした。退職した後すぐにヨーロッパとアメリカ旅行、国内の温泉巡り、私と義弟の嫁にハイブランドのバックをプレゼントしてくれたり、弟夫婦が車の買い換え時期だったので軽自動車を一括で買ったり。私たちには新しいダイニングテーブルと洗濯機を買ってくれました」 退職金は住宅ローン返済へ充てるため残らないとため息交じりに言っていたが、陽子さんは義母の変わらない金遣いぶりを見ていて「なんだ、余裕あるじゃん!」と感じていた。 しかし、退職して5年が経過しても義母の金銭感覚と暮らしぶりは会社員時代と何ら変わらない様子で、さすがに陽子さんも不安になってきたようだ。 そして義両親の金銭感覚や老後の心配をよそに、夫の弟の借金問題が発覚したのだった。 「義両親が65歳を迎えた頃、義弟の借金が発覚したんです。理由はカードローン。生活が回らないときに借り入れしていたみたいで、その額はなんと300万円だったらしいです。借金が発覚して、奥さんが激怒して義両親に告げ口したんですよ。そこまではいいんです。その借金、誰が払ったと思います?義父が払ったみたいで、私たち夫婦は開いた口が塞がりませんでした」 年金暮らしの義両親は、なぜ義弟の借金を肩代わりしたのか―― 後半は、定年退職後も金銭感覚が変わらない義両親のあり得ない行動と言動について詳しくレポートしたい。