開発見直しで「220億円特損」、スクエニが抱える苦悩 収益悪化でゲームの開発方針を大幅転換へ
新たな開発方針の下、今後は既存IP(知的財産)を活用した大型タイトルを中心に数を絞り、自社の開発リソースを集中させる。今回の特損では、この方針に合わない中堅タイトルなどが開発中止の判断を下されたとみられる。 ■新規投入のFFシリーズも不発 一方、大型タイトルへの依存度が高くなれば、売れ行きが予測を外れたときのリスクが増大するというジレンマに直面する。 実際、スクエニが最近発売したタイトルを振り返ると、有力なIPであっても必ずしもヒットする状況ではなくなっている。
2024年3月期はファイナルファンタジー16(2023年6月発売)とファイナルファンタジー7リバース(2024年2月発売)を投入したものの、開発費の償却負担や評価損をカバーできず、HDゲームの売上高は992億円(前期は785億円)、営業損失は81億円(同41億円の赤字)に膨らんだ。 厳選したタイトルをヒットさせるためのカギとなるのが、マルチプラットフォームでの展開だ。 FF16やFF7リバースはソニーの「プレイステーション5」のみで発売するなど、スクエニでは主力タイトルの一部を特定のハード端末での展開に限定していた。
一方、業界では1つのハードに依存せず、任天堂のスイッチやマイクロソフトのXbox、PCなどを含む複数のプラットフォームに同時展開するケースが増えている。ユーザー層や地域を広げることで、ゲーム自体の世界的ヒットだけでなく、IPの影響力拡大も狙うことができる。 「FFシリーズは映像美を押し出しているからこそ、ハイエンド向けのプレイステーションが選ばれていたが、今は海外で普及率の高いPCなどのスペックも上がってきている」(業界関係者)
スクエニによると、「開発を継続するタイトルや新たに立ち上げるタイトルは、基本的にほぼすべてマルチプラットフォームで展開していく」という。 ■横連携を重視した組織体制に変更 スペックの異なる複数のプラットフォームで同じように動かせる仕様を作り上げるには、そのためのノウハウが必要とされ、開発は複雑化、高度化する。この先スクエニでは、開発プロセスの見直しや合理化に加え、マルチプラットフォーム対応という条件下でのクオリティの維持・向上が求められる。