定年延長どころか「会社から出て行け」…40~50代の半分が切られる新たな45歳定年時代=韓国(2)
企業が45歳定年退職を押しつける背景は景気低迷にともなう業績不振が最初に挙げられる。例えばポスコの場合、業況不振に中国製低価格鉄鋼製品の攻勢により業績圧迫に苦しめられる。7-9月期の売り上げは9兆4790億ウォンで前年同期比2.0%、営業利益は4380億ウォンで39.8%減った。KTの場合、人工知能(AI)事業拡大に向け既存の通信線設計とサービス人材を縮小する過程で希望退職を実施した。 ここに年功序列型賃金構造という構造的な問題もある。経済協力開発機構(OECD)によると、勤続年数が10年から20年に増える時に韓国の労働者の平均賃金上昇率は15.1%で現れた(2019年基準)。OECD主要28カ国で最も高い。平均賃金上昇率の5.9%だけでなく、米国の9.6%、日本の11.1%とも対比される。 経済が高度に成長している時は問題ない。だが低成長時代に入り込むと企業の立場では40~50代が会社の経営に負担になる人材になった。賃金が高い上に会社の人材構造で占める割合も大きいためだ。 ある大企業の人事担当役員は「40~50代が主軸である高費用・逆ピラミッド人材構造では変化した事業環境には早く対応しにくい。着実に希望退職を進めて雰囲気を刷新してこそ生き残ることができる」と説明した。韓国開発研究院(KDI)のハン・ヨセプ研究委員は「年功序列にともなう賃金上昇の傾きが急なほど企業が40~50代の労働者の早期退職を誘導しようとする傾向が大きくなる」と話した。 問題は一度主要な職場から押し出された40~50代が再就職するのが容易でない点だ。再就職に成功しても職の質が落ちる。中高年労働市場の雇用、その中でも高賃金・高熟練雇用が不足するからだ。京畿道(キョンギド)のある雇用支援センター関係者は「40~50代の事務職出身が生産職で再就職するのは容易でない。彼らが望む賃金水準と企業が提示する金額の差が大きいことによるミスマッチも発生する」と話す。労働研究院のキム・スンテク選任研究委員は「40~50代の非自発的失業者は大企業と中小企業、正規職と非正規職の二重構造でいずれも下層部に追いやられ、結局定年より早く労働市場から離脱する可能性が高い」と話した。 現在45歳は通貨危機時代と違い仕事に熱中する「青年」だ。韓国行政安全部によると、住民登録人口の中位年齢(全人口を並べた時に真ん中にいる人の年齢)が今年末に初めて45歳を超える見通しだ。2014年末に初めて40歳を超えてから10年で5歳増えた。45歳定年の話が初めて出てきた1997年の通貨危機当時の中位年齢は30.3歳だった。 韓国保健社会研究院のイ・アヨン研究委員は「最近産業・職種の生成と消滅速度が速くなり、40~50代の再就職が難しくなった。個人ではなく社会の問題として今後も拡散する傾向」と診断した。続けて「準備ができていない、非自発的退職を準備された、自発的退職に誘導し退職後に適正所得を継続できる働き口に再就職できるよう対策を設けなければならない」と付け加えた。