【特集】2024年の岡山県の首長選挙 現職が相次いで落選した背景は?
KSB瀬戸内海放送
2024年、岡山県では4つの市と2つの町でトップを決める選挙がありました。いずれも現職が立候補しましたが、3つの市で現職が敗れました。一般的に選挙は現職が有利と言われる中で、こうした結果になった背景を探りました。 岡山県の市町村選挙(2007~2023)現職の勝率は72.6%
(新見市長選で初当選/石田實さん 11月17日) 「有言実行を貫き通し、市政の問題に正面から対峙していきたい」 (新見市長選で落選/戎斉さん 11月17日) 「私にできなかったこと以上のまちづくりに期待をしたい」 11月に行われた新見市長選で、再選を目指した戎斉さん(68)が敗れました。 (新見市の人は―) 「働く人が特に(新見市は)人がいなくて雇うにも雇えない。人口を増やすことをどちらが強く言われているかを見ていた」 「(市長は)1期では何も仕事ができない。途中だと思う。現役の人がもう1期くらいされたらよかったのでは」 (新見市議会/小河俊文 議員) 「人口減少、少子高齢化の中で元市長(戎さん)は継続・充実をうたってきたけど、新しい市長(石田さん)は改革ということで新しい新見市を求めている。それが市民に響いたのでは」 ■選挙になった5市町で現職3人が落選 岡山県では2024年、新見市、倉敷市、笠岡市、高梁市、吉備中央町、久米南町で市長選・町長選が行われ、いずれも現職が立候補しました。 選挙戦になったのは倉敷市を除く5つの市と町で、新見市、笠岡市、高梁市では現職が落選しました。 一般的に選挙は現職が有利と言われていて、岡山県でもその傾向が見られていました。 いわゆる「平成の大合併」で岡山県の市町村の数が27になった2007年から2023年までに118の市町村長選挙がありました。 このうち現職が新人などと争った選挙は63で、現職の勝率は73.0%でした。 ■現職の落選は「人口減少」が関係 地域政策に詳しい専門家は、現職の落選には「人口減少」が関係していると指摘します。 (岡山大学/中村良平 名誉教授) 「(人口が)ずっと右肩下がりになっていて、そういったところが、首長さんがかわってもう一つ新しい機軸を求めているんじゃないか」 2024年選挙戦になった5つの自治体はいずれも人口が右肩下がりになっています。 このうち、中村名誉教授が注目するのは、生まれた子どもと亡くなった人の数の差を示す「自然増減」ではなく、転入者と転出者の数の差を示す「社会増減」です。 新見市、笠岡市、高梁市の社会増減を示した表を見ると、いずれも、10年前から毎年100人以上減っています。 しかし、2024年現職が当選した吉備中央町と久米南町ではこの10年間で2度、社会増になっています。 (岡山大学/中村良平 名誉教授) 「久米南町は人口規模自体は5000人前後で、そんなに大きくないがそんなに減っていない。住宅開発も進んでいて、そういった意味であまり町政に対して不満を抱いている方がおられないのでは。吉備中央町は環境汚染の問題(浄水場の水質問題)もありますけども、地盤が非常にいいということで地震に対してリスクが低い。だから移住しようという人が徐々に増えてきて、社会増減がそれほど減っていないので、その辺を評価されたのでは」 ■コロナ禍を経て選挙運動に変化 求められるトップ像も 一方、有権者の投票行動に詳しい専門家は、新型コロナの影響を大きく受けた4年前の選挙で現職陣営の組織力が低下し、それを2024年の選挙まで引きずってしまったことが敗れた要因の一つだと分析します。 (東北大学大学院 情報科学研究科/河村和徳 准教授) 「実はコロナ(禍)の選挙によって高齢者中心の選挙運動はやりにくくなっている。握手をしなかったとか、ないしは声掛け、決起集会を自粛した形の中でネットワークが実はちょっと傷んでいた。そうすると組織戦により比重があった現職ほど落選するのが全国的な傾向としてある」 そして、河村准教授は、有権者から求められているトップ像にも変化が出ていると話します。 (東北大学大学院 情報科学研究科/河村和徳 准教授) 「我々の研究では、実はお年寄りも普通に若い人とか女性に投票している。とりわけ組織から働きかけがなくなったような方々はむしろ期待を込めて次の世代に投票しようとしているところがある。(首長は)現代風に自分の行動を、そして組織のマネジメントの仕方も変わっていかなきゃいけないし、変われないんだったら退場してくださいという形に今なっている」
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