Number_i、YOASOBIらのコーチェラ出演に見る、「日本の音楽」のポテンシャル
グローバルアクトとしてのNumber_iの可能性
そして、Number_iの登場。黒で統一した三人が現れると、太いビートが鳴り響く。ラップ色の強い楽曲「FUJI」だ。マイクを通した三人の声は力強い。「まずはoneバース」と、鋭く切り込んでいく神宮寺勇太。静と動のメリハリをつけ、フロウをフリーキーに使い分ける岸優太。低音豊かに「俺ら天地揺るがすuniverse」と宣言する平野紫耀。確かなラップスキルをまずは見せつける。 続く「GOAT」。三人が蠢くように動き出し、切れ味鋭いレのダンスパフォーマンスを披露。「FUJI」ではラップ、「GOAT」ではダンス。二つの武器を分けて示す演出であることがわかる。重心を低くくもった、運動量の多いヒップホップダンスを、一糸乱れぬ正確さで紡ぎだしてゆく。このかっこよさには痺れる。 配信で観たときは、未知の新人である故か、歓声が少ないように感じた。しかし、現場のオーディエンスがアップしていた動画を見ると、会場では大きな声があがっており、ダンスの迫力はより増して響いた。メディアを通した俯瞰の視点より、現場からの視点の方がかっこいい。ライブアクトとしての、Number_iの実力を思い知った瞬間だった。 「GOAT」の後半には香港のポップスター、ジャクソン・ワンが登場、マスクも含む黒づくめの姿でクールにラップしていく。トラックと声の相性はバッチリ。ジャクソン・ワン参加のリミックス音源の発表も今後期待される。 「GOAT」は4月16日に、アメリカのiTunesにおける総合チャートで10位、ヒップホップチャートで3位にチャートイン。Number_iのパフォーマンスが、アメリカのオーディエンスに響いたことの証左だろう。今後より大きなグローバルアクトになる可能性も、十分に考えられる。 今回の88Rising Futuresでの日本勢のステージは、日本の音楽シーンの重要な一歩だ。もちろん、過去にもPerfumeやX JAPANがコーチェラに出演していた。しかし、今回はアジアの一員としての日本の音楽を示す意図が一貫していた。 YOASOBIや新しい学校のリーダーズ、あるいは初音ミクのソロステージにも同様のことが言える。日本のシーン全体として、どのような表現が為しえるのか。今回のパフォーマンスの完成度の高さと、表現の多様なアウトプットは、芯の通った強い意志をそれぞれのアクトが共有していることを示していた。 コーチェラのステージは、一フェスティバルの1度のライブに留まらず、欧米を中心とするポップシーン全体に影響を及ぼす。2024年のコーチェラは、日本の音楽が底力を見せた瞬間だった。そして、今後の飛躍を約束するステージだった。グローバルでの日本のアーティストの活躍に、期待は増すばかりだ。 ---------- 【コーチェラ第2週における日本のアーティストの出演ステージ】 YOASOBI 2024年4月20日(土)12:20~13:05(日本時間) ステージ:Mojave 初音ミク 2024年4月20日(土)13:50~14:40(日本時間) ステージ:Mojave 新しい学校のリーダーズ 2024年4月22日(月)13:40~(日本時間) ステージ:Gobi ----------
伏見 瞬(批評家/ライター)