いいとも「ウキウキ WATCHING」は20分で誕生 アン・ルイスやトータス松本らを手がけた「伊藤銀次」の音楽人生
ポップなセンスが引く手あまたに
大瀧は後に、「ごまのはえ」のライブを聴いた際の「紙ひこうきの歌」という、のちに「ココナツ・ホリデー」と改題されることになるインストゥルメンタル曲に“ポップさ”を感じ、プロデュースを引き受けたと伊藤に明かした。そのセンスを大瀧が嗅ぎ取ったことが、山下達郎をはじめとする多くのミュージシャン仲間と交流するきっかけを作り、伊藤の音楽活動の枝葉を広げることにつながった。 1979年頃からは松原みきをはじめ、アレンジャーの仕事も手掛けるように。佐野元春もアレンジャーから縁ができ、後にバンドのギタリストを務めるまでに。そして1980年暮れに発表したアルバム「G.S. I LOVE YOU」を皮切りに、人気絶頂の沢田研二のアレンジを始めた。シングル「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」や復活したザ・タイガースの「色つきの女でいてくれよ」、加えてアン・ルイスの「ラ・セゾン」「六本木心中」なども編曲した。 詞曲が楽曲の要であることはいわずもがな。アレンジャーもまた、広く人々に聴かれる形に仕上げる、重要な役目のはずだが……。 「作詞作曲には著作権が発生するけど、編曲は作業に対する手数料・対価でしかない(苦笑)。バンド活動を通じて、イントロも間奏もすべて自分たちで演奏してきたから、この歌の出だしに一番カッコいいイントロは……と考えるのは、当たり前の作業です。『六本木心中』は最初、ザクっとした男くさいロックで、そのままやってもアンちゃんに合わない。カラフルでポップにしたかった。その少し前に流行っていた『Flashdance…What a Feeling』のような感じで行こうと。ただなかなか歌につながらなくてイントロに3つの部分があるやたら長いものになって。もうイントロだけで作曲の著作権いただきたいぐらいです(笑)」
お昼休みはウキウキ…
沢田やアン・ルイスのほか、多くのアーティストに楽曲提供してきた。中でも「笑っていいとも!」のオープニング曲「ウキウキ WATCHING」(いいとも青年隊)は日本人の耳に長く深くなじんだ。 「タモリさんが四か国語麻雀とか“イグアナ”をやっていた頃でね。そのタモリさんがオープニングでいいとも青年隊の3人をバックに踊りながら歌う歌を書いてくれ、と。小学校の頃に好きだった『シャボン玉ホリデー』の『明日があるさ』みたいな感じはどうでしょうって提案したら、プロデューサーの横澤彪さんが乗ってきた。20分ぐらいで作りました。テレビ主題歌などは通常、手数料払いなんですが、いいとも青年隊がレコードを出してくれて、著作権が発生してラッキーでした」 今でもライブでこの曲を歌うと会場が沸く。番組が終了して久しくなり、一時は演奏をやめていたが「いいともの曲が聞きたかった」という声が多く、復活させた。