サラリーマンの給与の“地域格差”は「官製」だった? 現役裁判官が“国”を訴える異例の訴訟を提起「すべての国民の未来のために戦う」
竹内判事:「(統計の結果から)自動的にこの表ができたとは到底考えられない。全体的に、いわゆる統計不正的なものがあるのではないかと疑っている。 なぜかというと、1級地(20%)の『東京都特別区』に次ぐ2級地(16%)のなかに『埼玉県和光市』が含まれている。 埼玉県のトップが(県都・県内最大都市のさいたま市ではなく)和光市になっている。これはなぜかというと、(財務省の外局の国税庁の研修機関である)税務大学校があるからだとしか考えられない。 司法研修所や理化学研究所もあるが、それらのためとは考えにくい。そこが訴訟でどう説明されるのか。 その他にも、重要な国家の機関があるところが割と優遇されているという傾向があると思われる。この点について、きちんと緻密に論争をしたい」
「地域手当」は『裁判官の報酬』の一部か
本件訴訟のメインとなるのは、「憲法80条2項違反」の問題である。憲法80条2項は以下のように規定している。 「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない」 地域手当の格差により給与が減額されたことは、この規定に違反するとの主張である。この主張は、地域手当が「報酬」に該当することを理由とする。 地域手当の制度が導入されたのは2006年からであり、これは人事院が2005年8月に行った「給与勧告」に基づく。 人事院は同勧告のなかで、一般職の非現業国家公務員の給与を全体として4.8%引き下げるのと同時に、民間賃金が高い地域には3%~18%の地域手当を支給するとの勧告を行った(現在の地域手当の最高は20%(東京23区))。そして、最高裁判所もこの人事院勧告の内容を受け入れたという経緯がある。 訴状では、この経緯を紹介したうえで、「地域手当は支給割合が勤務地によって異なるにもかかわらず、(中略)報酬の減額と引き換えに導入されたものであるから、(中略)実質的には報酬であるというべき」とする。 また、竹内判事は会見で、地域手当が報酬の一部をなすことの根拠として、他の『手当』とつく給付と質的に異なるということも挙げた。 竹内判事:「憲法が減額を禁じている『裁判官の報酬』とは何かが問題となる。 地域手当は『手当』という名前がついているが、他の『手当』とは性質がまったく違うものである。 たとえば、『住居手当』『通勤手当』は定額制で『利用者1人いくら』とか『交通費いくら』とか、『上限いくら』とかだいたい金額で決まる。 ところが、地域手当は『基本給×何%』。このような手当ては類例がない。また、最大で20%というのは大きすぎる。これを報酬と一体とみないならば、憲法80条2項の規定はなし崩しにされる」
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