大規模リニューアル工事を進めている今井書店のグループセンター店＝松江市田和山町

　ネット通販や電子書籍の普及で書店経営が厳しさを増す中、地元書店大手の今井書店（松江市殿町）が新規事業の展開に乗り出している。ネット通販事業を開始し、実店舗と電子商取引（ＥＣ）の複合販売体制を構築。松江市にある基幹店舗は大規模リニューアルし、商圏を広げる。既存事業の見直しを進めながら、経営環境の変化に対応していく。 【特集】消える書店　ビジネスモデルの制度疲労　カケルｘサンイン

　人口減少によるマーケットの縮小にネット通販や電子書籍の普及もあり、売上高は１９９６年以降、減少傾向が続く。詳しい経営数字は非公表で、東京商工リサーチによると、２０２３年１１月期の売上高は前期比６・８％減の５７億５４００万円だった。 　ネット通販事業は、公式会員アプリ「ＢｏｏｋＳｔｏｒｅ（ブックストア）」を通じて今夏に始めた。購入額が３９８０円以上で送料無料になる。ポイント特典やクーポン、イベントや新刊などの情報提供、全店の在庫を調べられる検索機能がある。年内にＣＤやＤＶＤの取り扱いも始める考えだ。 　アプリは、楽天から移籍したエンジニアが中心となって企画。既存顧客の利便性を向上し、１人当たりの購入点数を増やす。会員数は１０月時点の約８万人を、来年４月までに１４万人に増やす方針。 　ネット通販普及などによる苦境は地方書店の共通課題となっており、開発したアプリは２５年春以降に他社にも販売する予定だ。

　実店舗については再編が進み、現在は両県で１２店を展開する。近年では２３年に出雲市で１店を閉店、２４年は境港市と鳥取県琴浦町で各１店を閉店し、米子市で１店を開店した。林一郎取締役は「選択と集中を進めながら、事業構造を変革していく。実店舗については、無書店地域への新規出店も検討している」と述べた。 　基幹店舗のグループセンター店（松江市田和山町）は来年１月のリニューアルオープンに向け改装作業中。詳細は明らかにしていないものの、「本以外の楽しみもあり、半日過ごせる店」（林取締役）をコンセプトに、商圏を広げ来店頻度も上げられる店づくりを目指すという。実店舗での販売データを基に、食品や文具、雑貨などの特産品の開発や販促に生かす新規ビジネスも視野にある。