難病を告白した「キンクミ」金田久美子プロに聞いた 病気とつき合うために〝やってみたこと〟
8月に難病をカミングアウト
10月11~13日に開催された『富士通レディース2024』(千葉・東急セブンハンドレッドクラブ)は、通算14アンダーで並んだ古江彩佳と山下美夢有のプレーオフ2ホール目で、山下美夢有がウイニングパットを沈め今季初優勝を決めた。 【舌をペロッと】すごい…病気を告白したのに表情が明るいキンクミ 今大会は海外を主戦場とする古江彩佳や吉田優利も参戦。ルーキーイヤーを米下部ツアーで戦い国内ツアー初参戦の馬場咲希は4位につけていたが、最終18ホールで「+4」をたたき、通算8アンダーで14位だった。8月20日に自身のSNSで「メニエール病」を公表した女子ゴルフ・金田久美子プロも同大会に出場した。 メニエール病は突然、激しいめまいが起こり難聴や耳鳴り、吐き気を伴う症状が起こるのが特徴だ。原因はまだ解明されておらず、何らかの身体的・精神的なストレスが関与して起きるとも考えられている。 東北大学大学院医学系研究科の研究発表資料によれば、東日本大震災の発生後にもメニエール病を含む神経耳科的疾患患者が増加したという。このことからもストレスとの関係性は明らかだ。 YouTubeチャンネル『金田久美子のキンクミちゃんねる』では「緊急報告」として動画を公開。病気について自分の言葉で関係者やファンに心境を伝えていた。 そんな金田にあらためて病気について聞いてみた。 「私、結構ラウンド中とかも目をつぶったりとか結構しんどい感じでやっていたので、傍からみたら結構やばかったと思うんですよ。大丈夫? 倒れそうだよって。まわりに心配かけるのも気が引けたので、言っちゃったほうが楽かなと」 と、あえて病気を公表した理由についても教えてくれた。 病気を公表したことで想像以上の反響があった。病気についてのいろいろな情報をくれたという周囲の人たちへの感謝を口にする。 「すごくありがたかったですね。選手の中にもめまい持ちの子がいて『これがいいよ』って教えてくれる。DMとかにもいろんな情報をくれるんですよ。(公表して)本当に良かったな。それ以上は聞かれないし」 ◆試合を棄権、3時間ほど動けない状態に 体調の変化は昨年からだった。 「去年は謎の熱が6回ぐらい出て、そのうちの2つはコロナとインフル。1ヵ月おきに罹ったんです。でも、それ以外は検査したら何も出なかった」 元々、自律神経の乱れに自覚症状があり、睡眠不足でプレーすることもしばしばだったという。だが、8月の『CAT Ladies 2024』(神奈川・大箱根CC)初日は、スタート前に朝食を戻してしまうほど体調が悪化し試合を棄権した。3時間ほど動けない状態となり、夕方に地元の名古屋に戻ってメンタルクリニックで検査した。 「私は自律神経だと思ったんで、最初それがおかしくなりすぎちゃったパターンのやつかなと。ずっと寝れなかったのもあったし……」 その日のうちに知人の心臓外科医に相談したら「そんなもんメニエールとかめまい症だから耳鼻科で診てもらえ」と言われ、翌日改めて耳鼻科で検査をしたら「メニエール病」と診断された。 転々と病院を探しながら治療法を模索したが、良い治療法は見つからなかったという。ただ、どの医者からも言われるのは“ストレスが原因”ということだった。ある医師からは「あなたの考え方が変わらなきゃ、この病気は治らないよ」とか「ゴルフを辞めたら治るよ」とも言われたそうだ。 「それで私は本を読むようになったんです。自分の性格を変えるのは本しかないのかな。人間はすぐには変われないとは思うんですけど、(本を読むことで)考え方とかを良い方向に変えられるんじゃないかと。私はどうでもいいことをずっと考えているタイプなんで……」 書店に出向き、内容を見ながら購入した本は『覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰』(編訳・池田貴将/サンクチュアリ出版)とか『センスいい人がしている80のこと』(有川真由美著/扶桑社)だった。 「私には一番わかりやすくて、簡単でしっくりきた。最近は本の効果もあってイライラするのがちょっとは減った気がします」 本から学ぶことや医師から言われたことを実践することで「気持ちが楽になった」と語る。 ◆宮里藍に教わったこと 10月4~6日の『スタンレーレディスホンダゴルフトーナメント』(静岡・東名CC)ではホステスプロとして参戦し、プロ・アマ戦で宮里藍プロと同組でラウンドする機会を得た。病気の話は一切せず「スイングのときは何を意識していますか?」、「パターのときは何を意識していますか?」と素人のような質問ばかりしたという。「上手い人はどうやっているかを聞きたかった」そうだ。 中でも世界の舞台で活躍した宮里藍プロのプレーで、彼女が以前から気になっていたことを直接聞いてみた。 「『藍さんってイライラしているのを出さないじゃないですか。そういうときはどうしているんですか?』と聞くと『私は表に出すともっと駄目になるタイプだから表に出さないようにして数を数えたりする』って言うんですよ。忘れるために1、2、3、4、5……って歩幅を数えるみたいな」 金田プロはすぐに試合で実践してみたという。 「だからスタンレーのときはいつもより怒っていないはずです(笑)」 今後の目標はまずは病気の克服だ。そして「体を作り直さなきゃ。ここ2年くらいしっかり準備ができていない。勝つための準備ができる体づくりが目標です」と語る。「病気なんだから休めばいい」と言われることもあるが、「休んでも治る保証がないんだったら出るしかない」と覚悟を決めた。 病気の発表からまもなく2ヵ月。前週は予選落ちだった金田は5アンダーで予選を通過し、最終日はイーブンのスコア。トータル5アンダー29位タイの成績だった。もともとネガティブ思考なのに「そうは見られない」というプロが病気と向き合いながら少しずつ前に進んでいる。 <プロフィール> 金田久美子(かねだくみこ)1989年8月14日生の35歳。愛知県名古屋市出身。父親の影響で3歳からゴルフを始める。8歳で「世界ジュニア選手権」を制してタイガー・ウッズの記録に並ぶ。当時は数々のアマチュア大会で優勝し“天才少女”と呼ばれた。’08年にプロ転向。’11年「フジサンケイレディスクラシック」で初優勝。’22年「三菱電機レディスゴルフトーナメント」で11年ぶりの優勝を果たす。身長166cm、体重51kg。愛称は「キンクミ」。メルセデス・ランキングは76位(富士通終了時) 取材・文・写真:戸加里真司
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