書店減食い止めろ、県立図書館「鳥取方式」 蔵書の大半地元購入、取り組み継続30年
書店の減少を食い止めようと、鳥取県立図書館は蔵書のほとんどを複数の地元書店から購入する取り組みを30年以上続けている。「鳥取方式」と呼ばれる取り組みが評価され、2024年11月には文字・活字文化振興に貢献した団体に贈られる高橋松之助記念「文字・活字文化推進大賞」を受賞した。 県立図書館には、週替わりで複数の地元書店から本が持ち込まれ、棚に並べられる。新刊はもちろん、医学書や経済の専門書、絵本などジャンルはさまざまだ。職員が実際に手に取って選び、購入。売り上げは直接書店に入る。女性職員は「書店の方が心を込めて選んでくれていると思うので、一冊ずつ丁寧に見ている」と真剣だ。 取り組みを始めたのは1990年代。経営難や後継者不足から書店数が減少している現状を危惧した職員が、何とか力になりたいと発案した。現在では山陰地方に複数の店を展開する書店から個人経営の店まで、計8店と提携する。図書館専門の企業や全国展開の書店を使うケースが多い中、県立図書館は年間約1億円分のほとんどを地元書店から購入している。
同県湯梨浜町の書店「汽水空港」も今年春に提携を始めた。個人で店を営む森哲也さん(38)は「薄利多売ではなく、もはや“薄利少売”の商いとなったかのように感じる。大口の注文が定期的にあるのは本当に助かる」と話す。 だが現実は厳しい。出版文化産業振興財団によると、鳥取県の19市町村中7町には書店がない。選書などを担当する県立図書館資料課長の岩崎武史さん(46)は「図書館も書店も、いかに本を手に取ってもらう機会をつくるか、というのが目標だ。取り組みがその一助になれば」と願った。