東京タワーが開業55周年 「脱・観光地」目指す
「脱・観光地」目指す
昭和年代は団体旅行の隆盛期だったが、平成に入ってくると「団体」から「個人」の時代になった。その意味で、東京タワーにとって、いま「脱・観光地」がキーワードになっている。観光地が悪いというわけではなく、東京タワーにはどうしても「地方出身者が行く観光スポット」「いつでも行ける」という根強いイメージがあるからだ。そういうイメージを払しょくし、いかに首都圏の若い世代にも、東京タワーに来てもらうか、がカギだという。 例えば、仕事帰りのサラリーマンやカップルらが、ふらっと訪れるイメージで、いわゆる「デートスポット化」だ。東海林常務は「イルミネーションを始めて『夜』、つまり『個人』にシフトしてから、だいぶデートスポット化してきた」と話す。最近では「ドラえもん」特別展のようなイベントや、展望台でライブを開催するなど「ふらっと来てもらう」心地よい空間づくりのためのプラスアルファを模索している。 そして今後は、案内ガイドの充実を目指すという。東京タワーが「東京の中心に位置すること」の強みを生かして「一望できる東京の街の案内ができるようにしたい」というのが東海林常務の夢だ。「展望台で、そこから見えるビルや建物の歴史や文化的背景を説明し、単に『おお、景色がすごい』で終わらない案内ガイドができたらいい。またタワー周辺のグルメ情報も案内したいし、展望台に来たお客さんに満足してしてほしい」。 第一弾として、まず12月3日、東京タワー1階に「ウェルカム・ラウンジ」をオープンさせた。そこには、建設中の東京タワーやさまざまな過去のライトアップの写真や映像が紹介されている。東海林常務は「展望台に上がる前に、東京タワーの歴史を知ってもらって、高揚感を高めてもらえれば」と期待。「おもてなし」の精神で心地よい空間の演出を目指す。
「東京の風景」に
東京タワーは2013年6月、登録有形文化財に登録された。「戦後日本の復興の象徴として、また高度経済成長の原点として、国民に広く親しまれている」ことが理由だ。 東京タワーは、いまや東京の風景に欠かせないものになっている。「ALWAYS 三丁目の夕日」や「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」などをはじめとして、小説や映画、歌などで描かれることも多い。また、人々の生活にも浸透している。東海林常務によると、新婚カップルから「東京タワーでプロポーズしました」という言葉や、近くの病院の入院患者から「病院の窓から見えた東京タワーで元気がもらえました」などの感謝の言葉がしばしば届くという。まさに「人々の人生とともにある」といえる。
「インフラ」としても
そして「電波塔としての役割が終わったわけではない」と東海林常務は強調する。地上デジタル放送の電波送信は東京スカイツリーに移ったが、もしもの場合の「予備塔」としての役割がある。そのために、常に万全の保守管理を行っている。またFMラジオの一部は、いまも東京タワーから電波を送っている。 総合電波塔としての役割の多くは東京スカイツリーに譲ったが、地方からの観光客中心の観光スポットから、首都圏の人たちもふらっと立ち寄れるプレイスポットへ――。東京タワーは生まれ変わろうとしている。