「一緒に演奏したい……」ピアニスト・上原ひろみの挑戦とは?新譜『Sonicwonderland』を教えて!
ユーモアにあふれた音色が新たなインスピレーションに
――今回のアルバムは、ゲーム音楽やマーチング・バンドを思わせるような「ボーナス・ステージ」をはじめ、「ゴー・ゴー」や「トライアル・アンド・エラー」などから、上原さんの遊び心やチャーミングな部分がこれまで以上に出ていると感じました。自分でもこれまでとは違うモードでやっている感覚はあったのでしょうか。 このプロジェクトは、キーボードを弾きたいという欲求が強くあって始めました。キーボードって私の中でピアノとはまた違う位置にあって、すごくユーモアに溢れた楽器なんです。なので、そういう要素は必然と増えていると思います。作曲するにおいても、この楽器はピアノと比べて音が伸びたり曲がったりしますし、音色も違いますし、その音が持っているインスピレーションが全然違うので、曲作りに関しても出てくるものが違ってきますね。 米ラジオ局「NPR」の人気シリーズ企画「Tiny Desk Concerts」に登場。 ――キーボードだと、ピアノよりも多彩に音を創れるし、演奏や音の出し方にも幅が広がるため、どんどんアイデアが湧き出てくるという感じだったのでしょうか。 そうですね、いろんな面白い音だったり、音色にユーモアを感じたり、そこから何かインスピレーションが沸いてきて、っていうのはありますね。 ――このNordという楽器を弾きたくなったきっかけは? きっかけは特にありません。2007年か2008年くらいにキーボードを結構フィーチュアしたアルバムを作っていてのですが、それ以来なかなかがっつり弾く機会が最近なくて、ちょっとまたやりたいなぁと思って。
バークリー音楽大学時代の友人オリーがシンガーとして参加
――男性のヴォーカル曲「レミニセンス」も入っていますね。 歌っているオリー・ロックバーガーは、シンガーであり、ソングライターでもあり、ピアノ奏者でもあるのですが、バークリー音楽大学時代の同期で20年以上の仲なんです。ずっとお互いの活躍を応援し合ってきましたが、2021年の初めにこの曲が完成した時にオリーの声が自分の頭の中に聞こえてきて。それで「一緒に作詞をしてくれない?」って連絡したら、「いいよ」って返事が来て、学生のノリですね(笑)。Zoomで意見交換しながら、一緒に作詞をしました。 ――歌詞の内容を教えてください。 本当に大切な人を思って歌う曲にしたくて、その関係性というのも、ロマンスのある関係かもしれないし、親子かもしれない、兄弟かもしれない、友人かもしれない、それはわからないけれども、ただあまり会えない、または二度と会えない人に贈るというのは決めていました。そのなかで「ここは季節を感じる歌詞にしたい」、「自然に関する言葉を入れたい」とか自分の希望を話して、二人で書き増してきました。 ――オリーのソロアルバムやMister Barringtonというバンドの作品も聴いてみたのですが、今回の方が彼の特徴的な声質が俄然出ていると思いました。 Mister Barringtonもソロ作も、かなり古いですからね。最近は共作ばかりやっていて、ルイス・コールとも一緒にやっていましたけど、自分の作品はあまり出していないんじゃないかな。このバンドを始めた時に、「トランペットが入ったバンドにオリーの声、いいと思うんだよね」、「あの時に作った曲を入れるっていうのはどうかなぁ」って彼に提案して、その後は、「ちゃんと二人の作品が日の目を見ることができて、仕事にも還元されて良かった」と話していました。