「フィットネス」市場、復調 前年度比1割増へ 大手は10年で3千店超増 急増「chocoZAP」が存在感
「フィットネスクラブ・スポーツジム」業界動向調査(2023年度)
コロナ禍で需要が落ち込んだフィットネス需要が急回復している。2023年度における、スポーツジム等を含む「フィットネス市場(事業者売上高ベース)」は6500億円前後で推移する見通しとなった。コロナ禍以降、客足鈍化の影響を受けた22年度(5835億円)から10%超の増加となり、過去最高だった19年度(7085億円)に比べて9割前後の水準まで回復するとみられる。 フィットネス事業を展開する主要な大手15社の店舗数推移をみると、2023年度末時点では5900店前後に到達するとみられ、市場規模同様に10%前後の高い伸び率で推移する見込みとなった。10年前に比べると3000店超・2.3倍の増加となったほか、コロナ禍の影響を受けた20年度末時点(4387店)以降からも1000店超増と急拡大した。特に、近年は「chocoZAP」(運営:RIZAP、東京・新宿)など少額・小規模ジムの出店増が全体の店舗数を押し上げた。
フィットネス市場は、コロナ禍の影響で度重なる営業時間短縮や休業に直面し、会費免除や休退会者の増加を余儀なくされ、市場規模は大きく減少した。 一方、在宅勤務などの長期化で健康を意識した動きも広がり、フィットネスやジムの利用者は回復傾向にある。1週間当たりの滞在時間が短く、「タイパ」に代表される価格帯に敏感な若年層を取り込んだ、月額3千円前後の割安なフィットネス業態の成長が、業界全体の市場拡大をけん引した。トレーニングやエステに特化し、運動初心者や女性をターゲットにしたパーソナルジム業態など、新たな利用者層を取り込んだ業態の拡大が進んだことも、アフターコロナ下で目立つ特徴的な動きだった。 損益ベースでは各社で二極化が鮮明となった。2022年度の損益が判明した約70社の実績ベースでは「増益」が41.7%を占めた一方、「赤字」「減益」など業績が悪化した割合も計5割を占め、傾向が分かれた。赤字となった企業では、店舗運営に必要な電気代の高騰に加え、プール運営では水道代の上昇、トレーナーなどが常駐する店舗では人件費の上昇も響いた。会員費の値上げによる対応が多かったものの、コストアップ分を吸収できなかった企業が目立ったほか、月額料金が安価な格安ジムの台頭などで顧客獲得競争が激化し、収益力が低下したことも要因となった。