「コンサルには頼らない」と断言する富士通社長が、なぜコンサル1万人計画を掲げたのか
失敗し続けたコンサル人材の育成
── そういう意味で、富士通が社内で求める「コンサルティングスキル」は、一般的なコンサルに求められる能力とは少し異なるのでしょうか。 時田:もう1つ、1万人の根拠として「6万人」という数字があります。ものすごいトリッキーなやり方ですが、富士通の中で名刺の肩書を「コンサルタント」にしてもいいなと思える人材プールが6万人いたんです。 富士通では、この何十年の間に、コンサルタントを育てる取り組みをもう何回もやってきました。SE出身や営業出身の人をコンサルタントにしようとしていましたが、なかなかうまくいかなかったわけです。。 でも、本当のコンサルタントスキルというか、コンサルタントとしてお客様から選ばれる能力というのは、例えば経理や人事、リーガル、あるいはファシリティマネジメントといったところなんです。この5年間、CEOやCFO、CHROといったいろいろな経営層のお客様から声がかかる富士通の人材は、そういった人でした。 僕も、いわゆるコンサルタントを呼ぶことはありません。実践値や経験値がないから。本に書いてあることを言うだけ。どこかでやったことを聞きかじって、きれいにパワーポイントにするだけなら、いらないわけです。 ── AIで代替できてしまいそうですね。 時田:まさにそうなんです。なぜ富士通に6万人という(コンサル人材の)人材プールがあるかというと、我々はジョブ型人事制度やポスティング制度に取り組み、最近でも、OneERP+という世界最大規模の経理システムを動かしました。 少なくとも12万人が、自ら1番風呂に入るかのような、いろいろな障壁を超える経験をしている。その中には、ものすごく専門性が高い人材もいるわけです。 DXを自らやるということは、業務プロセスを変えるということです。そのためには商習慣を変え、いろいろな課題が出ててきうまくいかない中でも障壁を超えていく必要がある。解決に向けて、自ら実践しなければならない。 (今、富士通では)そういう人間が、お客様に会計システムの再構築などを提案しようとしているんです。そうすると、向こうだってCFOが出てくる。 「そういった人材は、コンサルタントとして通用するのではないか?」と、非常にトリッキーな考え方も(コンサルタント人材を1万人にする計画の前提として)あるということです。実際そうするかは別ですが。