TSMC進出で熊本市の鶴屋百貨店「桁違いの購入する顧客が増えている」けれど…多くの地方百貨店は苦境
鹿児島市の山形屋は単独決算の最終利益が23年度まで7期連続の赤字となり、5月には銀行の支援で経営再建を進めることが決まった。ただ、人口が減少する中で訪日客による免税売り上げは全体の0・6%にとどまり、福岡市内の10%以上に遠く及ばない。28年度までに再生のめどをつけたい考えだが、再建策に人員整理などの抜本策は盛り込まれず、先行きは不透明だ。
経営が悪化していた佐賀市の佐賀玉屋は昨年12月、自主再建の断念を発表した。経営権を継承した京都市の不動産会社は老朽化していた本館の営業を今年8月で終了し、ホテルなども入る複合ビルに建て替えて百貨店の機能は縮小する計画だ。年明けに就任した山越悠登社長(46)は「活気を取り戻したい」と語った。
テナント誘致、自前の売り場にこだわらず
厳しい環境の中、大分県を地盤とするトキハ(大分市)は売り場の改革で生き残りを図る。別府市の店舗では生活雑貨大手の「ロフト」を誘致し、10月にオープンした。自前の売り場にこだわらず、人気テナントを誘致して賃料収入を増やす戦略だ。
大分市の本店でも12月、ベビー・子供服フロアに子供向けの屋内遊び場がテナントとして開場する。市内には再開発でマンションが増え、天候に左右されない屋内施設でファミリー層を取り込む狙いだ。郊外の富裕層の大分市中心部への住み替え需要に対応しようと、マンションの紹介も本格化している。
かつて「小売りの王様」とされた百貨店は時代の荒波にさらされている。業界に詳しい日本経済大の西村尚純教授(流通企業経営論)は「余力があるうちに、地域の購買力に見合った規模に縮小することや、主力事業の他業態への転換を検討することが重要だ」と指摘している。
記者から
消費者の「ハレの日」を支える百貨店は、多くの人にとって心温まる思い出の場所だろう。筆者も家族3世代で食事をしたことや、初めての化粧品を百貨店で購入した学生時代を懐かしむ時がある。ただ、時代の変化とともに、消費者の行動は様変わりし、毎年のように地方の百貨店が姿を消している。ネット通販である程度のブランド品や流行のモノを購入できる現代で、地域の象徴である百貨店がのれんを掲げ続けるためには、大胆な刷新が必須だろう。地域の雇用を守り、のれんを未来へ引き継ぐ戦略を深く取材したい。(佐藤陽)