米紙「日本の政治的混乱は、市場と投資家たちにとって何を意味するのか」─安定のとりでは当面、機能しなくなる
自民党が衆院選で大敗し、過半数を維持できなかったことで、これまで投資家を惹きつけてきた日本の政策の安定性に疑問が生じている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、今後の見通しについてエコノミストらに取材した。 【画像】米紙「日本の政治的混乱は、市場と投資家たちにとって何を意味するのか」
「安定したマクロ環境が必要」
過去2年間の日本経済とビジネス環境の堅調ぶりは、大量の投資を呼び込むことにつながった。しかし、今回の衆院選に起因する政治的混乱から悪影響を受けるかもしれない。 日本経済は急速に成長しているわけではないものの、パンデミックによる混乱から少しずつ回復してきている。待望のインフレにより、日銀には約20年ぶりに利上げの余地が与えられた。 2023年には、ウォーレン・バフェットが日本の5大商社株を買い増ししたことを受け、投資家らは経済的・地政学的なリスクを抱える中国から、日本に資金を移しつつある。 日本の企業収益は堅調に推移しており、買収提案を真摯に検討するよう求める「企業買収における行動指針」の策定など、政府が進める転換により、企業は投資家へのアピールを強化するための措置を講じるようになっている。 株価はここ数十年で最も力強い上昇を見せており、日経平均株価は2023年初頭から50%近く値上がりしている。 だがいま、1955年以来、4年間を除いてつねに政権を握ってきた自民党は、衆議院で過半数を確保できておらず、将来の政治構造と経済政策の方向性は不透明なままだ。 マネックスグループの専門役員イェスパー・コールは、「ウォーレン・バフェットや他の投資家らが日本に期待した理由は失われていないが、安定したマクロ環境という背景が必要だ」と述べる。「当面、日本を魅力的にしてきた安定のとりでは機能しなくなるだろう」
政治不安はどう影響するか
政治アナリストの多くは、自民党が政権を維持すると予想している。しかし、同党は目下、野党と連携し、政権樹立に必要な衆議院の過半数を確保するという課題に直面している。 今回の選挙で野党は、経済に関する活発な議論を引き出すことをほとんどしなかった。代わりに、くすぶり続けている政治資金スキャンダルで自民党を非難することに焦点を当てた。 28日、日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)は1~2%上昇。これは政治的混乱により、日銀が追加の利上げを延期するのではないかとの予想を反映したものと思われる。円は対ドルでわずかに下落した。 円安は一時的な追い風となるかもしれないが、「政治的不安定は金融市場にとって懸念材料であり、株価下落の一因となるかもしれない」と、日銀の政策委員を務めたこともある、野村総合研究所のエグゼクティブエコノミスト、木内登英は語る。 近年、日本の金利が最低水準にあるため、投資家は海外でより大きなリターンを求めるようになり、円安が進んでいる。これにより、海外での利益が増加した日本の大手企業の株価が上昇した。だが2024年、日銀はインフレを受け2回の利上げをおこない、今後も追加の利上げをする姿勢を示している。
River Akira Davis