「通俗教育」歴史ひもとく 長野県松本市文書館で旧開智学校資料展
耐震工事に伴い3年間にわたって全面休館中の国宝旧開智学校校舎(長野県松本市開智2)が11月に再開するのを前に、旧開智学校の歴史の一端をひもとく企画展「開智学校で生まれた通俗教育施設」が8月25日まで、松本市文書館(鎌田2)で開かれている。同校に明治~大正に開設され、今日の図書館や博物館のルーツにもなった書籍館、紀念館、記念美術室にちなんだ資料約50点を並べている。 通俗教育とは社会教育に通じる明治期や大正期の概念で、学校教育以外に広く人々を啓蒙・教化する教育を指したという。開智学校では国の図書館令よりも早い明治24(1891)年に書籍館が、同39年に紀念館、大正13(1924)年に記念美術室が設置され、学童にとどまらず、教職員や市井の人々の学びの場となった。 展示されるのは美術館設立の趣意書や書籍目録、当時の学校平面図など。書籍館の記録からは日本通史、筆算全書、認識論や生理衛生学など幅広い書籍がそろい、頻繁に貸し出されたことがうかがえる。日露戦争の戦利品や出征した卒業生が母校に寄せた大陸の風物を陳列した紀念館の資料には「後世まで戦争のことをわすれさせぬよう」の文言も。同館特別専門員の窪田雅之さんは「物に付随する記憶の集積は今日の博物館に通ずる。いち早く社会教育に取り組んだ開智学校の先見性に触れてほしい」と話している。 観覧無料。問い合わせは市文書館(電話0263・28・5570)へ。
市民タイムス