自動車産業の10分の1も、成長は無限大! 農林水産物輸出が切り開く「モノづくり日本」再生への道筋とは?
農林水産物・食品の輸送方法は航空貨物と貨物船
農林水産物・食品の輸出方法は、もちろん ・航空貨物 ・貨物船 のいずれかとなる。 航空便のメリットは、なんといっても速達性、安全性・確実性だろう。鮮度が求められる農林水産物・食品は航空便でといきたいところであるが、貨物船と比較して一度で運べる重量が限られていることや、料金が高いことがネックとなる。 一方貨物船は、安価に大量に運べるところであるが、安全性・確実性に劣る。例えばカキの場合、鮮度が命の生ガキは航空貨物で、時間のしばりが少ない冷凍カキは貨物船でとうまく使い分けられている。イチゴは、傷がつくと商品価値が下がるため、損傷防止の観点から航空貨物が使用されてきた。 ただ、航空貨物だと確実ではあるが、運賃の高さから現地では高級品とならざるをえない。そこで、近年では外観・果肉品質の低下を抑えながら、イチゴを貨物船で輸送する方法が考案されている。 また、海上コンテナも野菜や果物を輸送できるように進化してきた。コンテナ内の温度調節が可能なリーファーコンテナに加え、酸素や二酸化炭素濃度もコントロールできるCA(Controlled Atmosphere)コンテナが活躍している。 実は、野菜や果物は収穫後も呼吸をしており、その呼吸が品質を低下させる原因だった。そこでCAコンテナを開発し、酸素や二酸化炭素濃度の濃度をコントロールすることで野菜や果物の呼吸を抑え、かつ鮮度を保つことに成功したのだ。CAコンテナは、今や良質な野菜や果物の輸出には欠かせないといっていい。
農業・漁業でモノづくりがカギ
農林水産物・食品の輸出額が、2023年に1兆4547億円と過去最高を記録したとはいえ、自動車の17兆2652億円と比較すると「約10分の1」にすぎない。しかしながら、裏を返せば現状は 「伸びしろしかない」 と捉えることもできる。これからは、自動車といった産業製品だけがモノづくりではなく、農業・漁業もモノづくりだと認識すべきではないだろうか。 もうからない、収入が少ないから農業や漁業のなり手がいないのであれば、輸出に活路を見いだして、稼げる工夫をすべきだ。 欧州の料理番組を見ていると、キタアカリやシイタケ、エノキ、ミソなど、なじみのある日本の食材が普通に使われていることに気づく。安全で良質な食材は、国に関係なく需要があるということだ。もし商品に自信があり、買い手がいるなら、もっと積極的に商売をして、国内の何倍、何十倍の価格で販売してもいい。農林水産物・食品は、外貨を稼ぎ得る可能性を大いに秘めており、 「海を渡って輸送するロジスティクス分野」 の役割がますます重要になってくるだろう。
本條光(物流ライター)