年末年始に読みたい5冊 日経BizGate「ひらめきブックレビュー」2024年8~12月公開分から厳選
2024~25年の年末年始は多くのビジネスパーソンが9連休以上を取得できそうだ。日ごろの仕事の疲れを癒やすと共に、読書を通じて来たる年に向けてアタマをリフレッシュする良い機会だ。日経BizGateで毎月6回掲載している「ひらめきブックレビュー」は、ビジネスパーソンの役に立つ多様な本の書評を掲載している。2024年8~12月に公開した記事の中から最も読まれた5本を紹介する。 (1)トランプ支持はなぜ続く 大統領選から見える米国の課題 『トランプ人気の深層』(池上彰、佐藤優ほか 著、宝島社) 2024年11月の米大統領選はドナルド・トランプ前大統領が勝利した。波乱を巻き起こすことが必至のトランプ氏はなぜ、これほどまでの米国民の支持を集めるのか。本書はその人気の理由を多角的に解き明かす。フリージャーナリストの池上彰氏、元外交官で作家の佐藤優氏、アメリカ学会前会長の前嶋和弘氏など6人の有識者へのインタビューから、現代の米国が抱える課題について広く理解できる。 (2)銀座の文房具店、知られざる歴史 大手メーカーにも影響 『銀座 伊東屋の仕事』(間部香代 著、グラフィック社) 文房具専門店「銀座 伊東屋」といえば、全国からファンが集う文房具好きの「聖地」だ。逸品ぞろいで、接客サービスも一流だと評判が高い。創業は1904(明治37)年で、明治、大正、昭和、平成、令和と5つの時代を超えてきた。本書『銀座 伊東屋の仕事』は、その知られざる歴史をひもとく。創業者と歴代社長のエピソードや時代ごとの大きな変化を、当時の空気を伝える写真とともに紹介している。 (3)大人気「風のない空調」のホテル 立役者は業界経験なし 『奇跡のホテル』(二枝たかはる 著、ダイヤモンド社) 2024年の夏は暑く、昼夜問わずエアコンがフル稼働した。だがエアコンをつけて寝ると、どうしても朝方寒くなる。どうにかならないかと歯がゆく思った人もいただろう。そんな心配とは無縁のホテルがある。福岡市にある「ホテル グレートモーニング」は、風の出ない独自の冷暖房システムを全館に配備。「健康的で快適な空気環境」を保っているという。本書『奇跡のホテル』は同ホテル誕生の経緯について、運営するFUTAEDA(福岡市)CEO(最高経営責任者)兼お客様係総責任者の二枝たかはる氏がつづった。ホテル事業にかける思いや自身の仕事哲学も語っている。 (4)チャットGPT生んだ人物の実像 AI開発は原爆と同じ 『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』(小林雅一 著、朝日新聞出版) 物知りの人間のように、あらゆる質問に答えてくれる対話型の生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」が登場した時の衝撃は忘れられない。開発元の米オープンAIは当時、一般市民にとってほぼ無名の企業だった。本書『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』は、オープンAIの設立発起人で共同創業者、CEOであるアルトマンの評伝。その半生やAI開発をめぐる足跡をたどりつつ、イーロン・マスクらシリコンバレーの異才たちとの人間ドラマを描いている。 (5)乗客が相互監視する時代に 電車内マナーの歴史をたどる 『電車で怒られた!』(田中大介 著、光文社) 新型コロナウイルス禍が終わり、通勤ラッシュが復活してきた。混雑した電車にリュックを背負った乗客がいたら「マナーがなっていない」とイラっとする人は多いのではないか。だがその怒りは、どこから生まれるのだろう。本書『電車で怒られた!』は、そんな疑問から生まれた一冊。電車内マナーをめぐる時代ごとの意識の変化を取り上げる。戦前から現代までの電車における「乗客のあるべき姿」がどのように変わってきたのかを、当時の鉄道事情や書籍、新聞記事を参照しながら考察している。