「どこまでズレてんだ、うちの銀行…」年末のカレンダー配りを廃止したメガバンクが始めた「まさかの新サービス」
● 銀行員総出で取り組む 年末に向けた「カレンダー巻き」 年の瀬が近づくと、銀行は来店客が増える。3月の年度末と12月の年末は世の中的にお金が動く季節ゆえ、銀行の窓口も法人個人を問わず、来店客で混み合う。この時期の風物詩でもある、年末にかけて配布するカレンダーの準備が始まると、いよいよだなと感じるものだ。 【この記事の画像を見る】 「年末に配布するカレンダーが本部から届いてます。今年は2000枚です。お忙しいとは思いますが、ひとりあたり30本巻いて下さい。12月2日より配布を開始しますので、遅くとも11月25日には巻き終えるよう、ご協力お願いします」 11月中旬の朝礼。取引先課で外回りを担当する若手が告知する。カレンダー巻きとは、鮮やかに彩られた化粧紙のカレンダーを、持ち運びやすいように、筒状のビニール袋に突っ込む単純作業のことである。カレンダーはA1サイズ。新聞紙の見開きほどもある大きなものだ。営業車を使える者はいいのだが、徒歩の場合は15巻きほどを紙袋に入れて持ち運ぶ。 年の瀬になると、総出で取り掛かる。今時、こんな手作業をなぜ現場にやらせるのか甚だ疑問に感じるが、おそらく外注に出すよりもコストが安いからに違いない。 カレンダーを何本巻いたのか、証明する手段はない。そうなると大方の場合、巻いていない者が「巻いた」と主張し始める。管理表には全員ノルマを終えたと記されているのだが、結果として巻いてない何十枚ものカレンダーが残る始末だ。 銀行員という人種は、どこまでも信用できない人間の集まりだとつくづく感じる。そして、正直でお人よしな者が、うそをついた者の尻拭いをする。 カレンダー巻きの習慣は、統合してM銀行になる前の、旧行の頃からあった。私が法人の取引先課に在籍していた頃は、訪れた先の社長室や経理室にどの銀行のカレンダーが飾られているかで、その企業のメインバンクを把握していた。その企業を支える重要な銀行からの贈り物を、粗末にはしなかったからだ。 余談だが、M銀行の前身であるF銀行は、ある画家が描いた「赤富士」の絵のレプリカを、また、MS銀行の前身となるS銀行は「銅滴(どうてき)」と呼ばれる銅の塊でできた置物を、大きな取引先に贈呈していた。Sグループは鉱山会社を有しており、銅を精製する際に落ちる滴が固まってできる「銅滴」を珍重していた。「赤富士」も「銅滴」も、いずれも縁起物として進呈したものだった。