『光る君へ』に新登場・泉里香さん演じる和泉式部。有名な<恋の歌>の相手はなんと…紫式部も公任も高評価!「ことのはの魔術師」の知られざる横顔
◆『和泉式部日記』に記された身分違いの恋 『和泉式部日記』(和泉式部の日記か、誰かが彼女になりきって書いた日記風歌物語かは議論がある)は、和泉式部と恋人・敦道親王の、長保五年(1003)四月から翌年一月までの恋愛日記です。 受領の娘と親王ですから、かなりの身分違いの恋だと言えます。 この敦道親王は、『光る君へ』には出てこなかった冷泉天皇の皇子。花山・三条天皇の弟にあたります。ちなみにドラマにて、花山天皇は本郷奏多さんが、三条天皇は木村達成さんが演じていらっしゃいました。 冷泉の皇后は朱雀天皇(村上天皇の兄)の一人娘で昌子内親王といい、和泉式部やその両親、更に夫になる橘道貞(のちに和泉守になったので「和泉」式部)もこの人に仕えていました。 敦道は昌子の義理の子。なので、和泉式部との接点もこのあたりから生じたようです。 しかし和泉式部の身分ちがいの恋はこれが最初ではありません。 和泉式部、もとは敦道親王の兄・為尊親王と恋をしていて、為尊親王が若くして亡くなった後に、敦道親王と恋に落ちています。 スキャンダルを繰り返したことで、親からは勘当。親王の正妻は家を出、彼女がその邸に入る…というなかなかハードな道を選んだのです。
◆藤原公任も紫式部も評価 しかし敦道親王も寛弘四年(1007)に、27歳で先立ってしまいました。 『和泉式部集』には、 ーーーー 身よりかく涙はいかがながるべき海てふ海は潮やひぬらむ (泣いても泣いてもどうして涙が止まらないのだろう。海という海は潮が引いてしまったみたい) ーーーー という、涙を海に例える狂おしいまでの悲しみの歌があります。 ドラマでは町田啓太さんが演じている才人貴族・藤原公任が、和泉式部の歌を赤染衛門のそれより高く買っているのは、こういった天才的な言葉の選び方にあります。 紫式部も『紫式部日記』で、彼女の素行や態度を批判。しかし歌については「本物の歌人ではない」と言いつつも、「をかしき一ふし」が目に留まるとしています。 そんな天才歌人を周りが放っておくこともなく、傷心の彼女に彰子サロンからスカウトがかかったようなのです。 最後に、私が今気になっている和泉式部の歌をご紹介します。 ーーーー わが袖は水の下なる石なれや人にしられでかわくまもなし (私の着物の袖は水の下の石なのだろうか。人に知られていないけど涙で乾く間もないわ) ーーーー 「泉」里香さんが演じる「和泉」式部ということで、「水」の歌を思い出したという次第です。
榎村寛之
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