じつは局アナ志望ではなかった…草野仁が「一人前のアナウンサー」になるために実践した「大事なこと」
キャスターとして、半世紀以上にわたり第一線で活躍してきた草野仁氏。安心感あふれる語り口調が多くの人に支持されているが、新人時代は一流のアナウンサーになるために、地道な努力を重ねていたという。若き日の草野氏は、どのようにして「伝える力」を磨いたのか?著書『「伝える」極意 思いを言葉にする30の方法』も話題の草野氏が、みずから明かしてくれた。 【一覧】テレビ局「本当は使いたくないタレント」…ワースト1位は意外な大御所…!
アナウンサーとしてもっとも大事なこと
私はもともとアナウンサーになろうと思ってNHKを志望したわけではありません。 大学では社会学を学んだこともあり、いろいろな人間行動についてきっちり取材をしてリポートをする、取材記者の仕事をしたいと思っていました。 当然、ニュース原稿を読んだり、人前で何か話をしたりした経験もありませんでした。そんな人間がアナウンサーとして一人前になるには、果たしてどうすればよいのか。修業していく上で、何がいちばんのポイントになるのか。私は考えました。 一般的に「アナウンサーに必要なこと」と聞いてすぐに思いつくのは、滑舌がよいとか、早口言葉を滑らかに言えるといった技巧的なことかもしれません。それらも確かに大切なことです。 しかし、私は「それは本質的な問題ではないな」と思いました。 むしろ、「日常使う会話のレベルを引き上げることがいちばん大事なのではないか」という考えに至ったのです。
「伝わり方」のレベルを上げることを意識する
日常会話と放送用の会話は、通常は別物として考えられています。 ですが私は、もしも日常会話が録音されて流されたとしても、放送として通用するくらい、自分の会話のレベルそのものを上げていくのが大事ではないだろうかと思ったのです。 「レベルを上げる」とは、難しい語を連ねて高度な表現をしてみたり、流暢なおしゃべりを繰り広げたりすることではありません。誰にでもわかる易しい言葉を使って、誰もが耳にした瞬間に「そうそう、そうだ」と理解できる会話をする、ということです。 つまり、「伝わり方」のレベルを上げるということです。 そして、どこを切り取って放送に使っても、何ら問題なく通用する会話が、普段からできていること。それこそがアナウンサーとしていちばん大事なことだと思ったのです。