明らかに異常…売上は急増も利益は横ばいで申告。50代社長が用意した新米税務調査官への「お土産」【税務調査の実態を税理士が解説】
税務調査は基本的に顧問税理士に電話で知らされる
いつものことですが、今回も知らない電話番号から着信がありました。 税務署「〇〇税務署ですが、〇〇先生はいらっしゃいますでしょうか?」 筆者「はい、私です」 といった感じで、税務調査のことが淡々と伝えられます。映画『マルサの女』のように、いきなり会社にズカズカ入ってくるようなことはしません。あくまで通常の税務調査なので、まずは顧問税理士に電話が来ます。 そして、税務調査の日程はおおよそ2日。長くて3日です。ついでに、税務署の希望日も聞いて、のちに会社の社長(50代男性)とすり合わせます。 今回の調査対象の会社名について考えていた筆者は、ここで疑問を抱きます。 「あれ? ここは、3期か4期程度しか決算をしていなかったはずなのに……」。 遠慮せずに、なぜ設立3期しか決算をしていない会社に税務調査が入るのか聞いてみました。すると、返ってきた答えは、「売上金額」と「利益金額」との関係に異常が見られたとのこと。たしかに、当該会社は設立から3年間、顕著に売上の増加が見られたものの、利益は横ばい。それについて「異常」と見られたようです。 とはいえ、常にさまざまなことが起きるのが会社。増収・利益横ばい、という会社も決して珍しいわけではありません。あまり納得感がないながらも、とりあえず税務調査を受けることにしました。
設立3年で税務調査が入るのは、ある意味ラッキー?
ところで、経営者さんのなかで、自社の決算書についてなんでも答えられる方はいますでしょうか。特に、資産と負債が記載されている「貸借対照表」。 筆者も、前任の税理士から会社の税務顧問を引き継ぐことがあります。すると、「なんだろう? この資産とか負債は……」と思うようなことが多々あります。 たとえば、預り金1万5,342円、仮払金24万5,300円……といったものであったり、長期貸付金の貸付先が役員の名前でなかったり。 いったんわからない支払や入金をこういった勘定科目にしておいて、数年経ったところで、誰もわからなくなるようなことは度々あります。さらに、税理士の交代があると、ほぼ迷宮入りになります。ただし、もちろんこのようなよくわからない勘定科目について税務署に聞かれても誰もわかりません。 「わかりません」という回答をすればするほど、税務調査も厳格にされますし、時間も長引く可能性が高まります。ただ、今回のように設立3年ともなると、さすがに会社と税理士双方で記憶も新しいし、探られたら痛いような変な取引も出づらいので、基本的にいわゆる「謎の勘定科目」は出にくいのです。 今回やってきたのは、比較的年齢が若い調査官2名。聞かれたことにはサクサク回答し、エビデンスも完備しているため、税務調査は予定していた2日間もかからず終了。