子どもの死「3割」は防げた?うつぶせ寝による窒息や水辺の事故、自殺… 死因検証し小さな命を守る制度「チャイルド・デス・レビュー」の現状とは
少子化に歯止めがかからない中、子どもたちが毎年、似通った背景や原因で命を落としている実情をご存じだろうか。新生児のうつぶせ寝による窒息や水辺の事故、進学問題で悩んでの自殺…。 「4歳の男の子の命を奪ったのは、たった一粒のブドウだった」子どもの事故死どう防ぐ?
同じような「不幸な死」をいかに防ぐか。対策として注目されているのが「チャイルド・デス・レビュー(CDR)」と呼ばれる制度だ。医師や行政などが連携して原因を分析し、具体的な予防策につなげる仕組み。欧米では一般的だが、日本ではまだ一部の自治体が先行して取り組み、課題を洗い出す「モデル事業」の段階だ。 取材を進めると、参加する自治体の一部からは「『防ぎ得た可能性がある』子どもの死が3割あった」との回答も。分析結果を再発防止策につなげた自治体もあり制度の意義は示されつつあるが、いまだに全国導入のめどは立たないままだ。何が課題となっているのか。小さな命を守る社会をどう実現するのか。CDRの現状を追った。(共同通信=山口恵、兼次亜衣子) ▽医療機関・警察・行政が情報収集、検証などで連携 CDRとは何か。子どもの死因をさまざまな角度から検証し、再発防止策に取り組む制度で、「予防のための子どもの死亡検証」と訳される。1970年代の米国の取り組みが発祥と言われている。
日本では2020年度に厚生労働省がモデル事業を始め、2023年度からは新設されたこども家庭庁に引き継いだ。2020~2022年度の3年間に参加したのは北海道、福島、群馬、山梨、三重、滋賀、京都、香川、高知の計9道府県だ。 各自治体では、医療機関や警察、行政などの機関が連携するための推進会議をつくり、その下に個別事例を取り扱う「多機関検証ワーキンググループ(WG)」も設置。死亡した子どもの既往歴や家族背景、経緯を分析し、事情を十分に探った上で同じ背景による死を減らすことを目指している。 自治体によって詳細な進め方は異なるが、例えば香川県では、事例検証に医師や警察だけでなく、児童相談所や教育委員会、助産師会など子どもに関係する様々な機関が関与している。2022年度の予防策として「妊娠期からの継続的支援」「医療的ケアが必要な子どもが転入した際の関係機関の連携」などを取りまとめた。 ▽類似の死亡事例には要因にも共通性が