子どもの死「3割」は防げた?うつぶせ寝による窒息や水辺の事故、自殺… 死因検証し小さな命を守る制度「チャイルド・デス・レビュー」の現状とは
「ベッドと壁の隙間に頭が挟まり、不慮の窒息死」「進路問題に悩んでの自殺」―。これらはモデル事業の中で自治体が実施した検証によって判明した背景だ。類似性がある死亡事例を見てみると、要因が共通しているケースが多いことが確認されたという。適切な支援や情報提供があれば防げた可能性がある。 CDRに詳しい小児科医の山中龍宏さんは、一刻も早い全国導入が必要だと強調する。水難事故や窒息などによる子どもの死は、背景や状況が酷似した事例が多いとした上で「CDRの意義は大きい」と指摘する。 ただ、国は「モデル事業による再発防止策をホームページに掲載している」として、詳細な検証結果を公表していない。一部の自治体が報告書をまとめて公表するにとどまっており、全体像は見えないままだ。山中さんは「国はまずモデル事業で得た具体的なデータを国民に共有してほしい」と訴える。 ▽3年間で481人の死亡例を検証、隠れた〝本質〟見逃さない
こうした状況を踏まえ、共同通信は4~8月、事業に参加したことがある9道府県へのアンケート調査を実施した。2020年から3年間にどれだけの検証がされ、どんな課題が浮かび上がったのかを探るためだ。 その結果、非公表などとした北海道と福島県を除く7府県が2022年度までの3年間の事業で、少なくとも481人の死亡例を検証対象としたことを確認した。水難事故、乳幼児の窒息死などが目立っている。 「防ぎ得た」死亡例数に関しては、群馬、三重、香川の3県が3年間の事業での検証対象に占める割合などを回答。香川では1割弱、群馬と三重で3割台に上っていた。「3割もの死は、防げた可能性がある」という結果はショッキングにも思えるが、個々の事例に向き合い、分析したからこそ出てきた数字だ。死因を究明し、予防策につなげるCDRの意義が浮かび上がったとも言える。 香川県の事業をリードする「四国こどもとおとなの医療センター」の医師、木下あゆみさんは「表に出ている死因だけでは、隠れている本質を見逃す恐れがある。検証されないままだと同じような死がまた起きてしまう」と話す。