二人の少女が惨殺された「福岡の事件」でここにきて浮上してきた「まさかの新証拠」の中身
再審が難しいワケ
――飯塚事件で一番気になっていることは、死刑の執行があまりにも早い。それが一番引っかかるんです。まだ執行されない人がいる中で、もちろん法務大臣が最後判子を押すんですけど、誰が2年で執行すると決めたのか、この辺が私にとって一番疑問なんです。 死刑確定から執行まで最近の平均で言うと4年から5年と言われているんですが、鳩山邦夫さんが法務大臣の2007年、2008年あたりは死刑執行の回数が増えていることは間違いないんです。 執行のペースが上がっていることは間違いなくて、ほかにも2年で執行された方はいらっしゃるし、法律では半年以内に執行せよとなっているので、法律的には何の問題もないんですけれども。私が気になるのは、飯塚事件はDNA型鑑定を(立証の)扇の要とし、血痕や尿痕や目撃証言、繊維などそれぞれ間接的な証拠にすぎなくて、久間さんが犯人だとすればという前提の中から引っ張ってきているだけで、証拠を詰めていって久間さんということではあまりないんです。 同じMCT118法でDNA鑑定を行った足利事件では再鑑定を行うことがすでに見えていましたので、法務省は知らないわけはない。しかも久間さんが自白していない。 その状況で2年で執行したのはなぜなのかという疑問はありますね。 一方で法務省はまったく、完全なブラックボックスで、理由、時期、なぜこの人、この時期の執行なのか明らかにしませんので、まったく分からないというのが現実なんです。 今回の作品ではそれぞれの正義というものを見ていますので、2年での執行についても、それぞれの立場の人がいます。2年じゃ早いという言い方をされている刑事さんもいますし、やっぱり、久間という人がいなくなってしまったことが最大のネックになっている。 再審を行うには本人がいない。しかも死刑が執行されていることで、再審のハードルがどんどん高くなっているということが言えるのではないかと思います。 第4回『冤罪が疑われる「福岡の殺人事件」を10年間取材してわき上がった「問い」』ヘ続く
木寺 一孝(映像作家、ディレクター)
【関連記事】
- 【つづきを読む】日本人は死刑を下すときに主観を排除できているのか…冤罪が疑われる「福岡の殺人事件」を10年間取材してわき上がった「問い」
- 【前回記事を読む】樹木希林さんに散々怒られて…「人に電話をかけるのも怖い」人見知りが、樹木さんに人間性を見抜かれて言われた「言葉」
- 「無実かどうかを言うことは限りなく難しい」二人の少女が惨殺された事件を10年間取材した男が持った実感
- 「そんな馬鹿なことあるか」二人の女児の遺体が発見された福岡県・飯塚事件…警察がひた隠しにした「捜査報告書、黒塗りの記述」
- 二人の女児の遺体が発見された福岡県「飯塚事件」…久間三千年の死刑判決を巡る、警察・弁護団のせめぎ合いと予想外の結末