二人の少女が惨殺された「福岡の事件」でここにきて浮上してきた「まさかの新証拠」の中身
それぞれの正義のぶつかり合い
〈木寺氏の冒頭挨拶〉 この作品についてそれぞれのご感想を持っておられると思うんですけれども、私自身の作り手の気持ちとしては、この作品はゴールを決めずに作ったつもりで、もちろん飯塚事件が冤罪だと一方的に述べるつもりもありませんし、元警察官、弁護士、メディアの方、久間さんの奥さんそれぞれが考える真実、それぞれの正義を突き合わせることで、ご覧になった方の中でどのような化学反応が生まれるか、それを提示する映画になっています。 自分がもし警察官だったらああいう捜査に加わったときにどうしただろうかとか、あるいは新聞記者だったら、あのとき自分はスクープを打っただろうかとか、そうした組織人としてどう振る舞うかという見方をしてもらってもいいと思っていますし、自由にご感想を持っていただければと思って作りました。 〈以下質疑応答〉 ――ネットでいろいろ調べたんですけど、あの女の子が二人乗せられていた白いワゴン車の話というのは、本当の話なんですか。 弁護団が第二次再審請求で提出した、新証拠のことですね。 事件の日、まさに久間三千年元死刑囚が持っているものと同じ車、似たような車が、八丁峠で午前11時に目撃されているんですが、木村さんという、福岡の郊外に住んでいる電気工事会社の社長が、同じ時間帯に福岡市に向かうバイパスで、若い少しひ弱な感じの男性が、白いバンの中に小学生を二人乗せているのを目撃したと。 それを当時気になって警察には通報したらしいんですが、ちゃんとした捜査がなく、ずっとやり過ごしていた。 その後も裁判に通って久間さんを見て「この人じゃないな」と思ったりして、長い間葛藤した気持ちといいますか、あのときなぜ自分は通報しなかったのか、ずっと悩みを持ってらっしゃったんですが、今回新証拠の証人として再審の弁護団に通報したという流れなんです。 いろんな目撃証言があります。警察側の証言としても、連れ去り現場でダブルタイヤを見た、八丁峠で紺色のダブルタイヤの車を見たという。本当に見たのかは本人の頭の中にしかないので、目撃証言というのは非常に難しいものだと思っています。
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