筑波大学長と早稲田大総長が語る、入試改革の必要性 「共通テストは年内に」「全科目を受験すべき」
高校生で文系、理系を決めるのは難しい
田中総長:永田先生も私も考えていることはほぼ同じです。早稲田大学は共通テストと大学独自の試験ですが、独自試験は知識を問う問題から、その場で考えて答える問題に変わってきています。やはり自分の頭で考えることができる学生を採りたい。各学部の入試は独自性が強いので一律にはしていませんが、総合型選抜は各学部で試みており、枠を広げていこうとしています。 永田学長:これまでの入試は高度成長期にはフィットしていましたが、そこから変えていかないといけません。入試を変えるのは、社会改革なのです。 共通テストは、科目を絞るのではなく、高校生に全科目を受けてほしいと思います。そうすれば文系、理系の区別なく、ある程度の水準ですべての科目を理解した学生が入学してくるようになります。高校では大学受験のために文系、理系を分けていますが、高校生にその時点で人生を決めさせるのは無理です。 田中総長:文理融合しないと世界の問題に対応できないと言われていますが、日本では大学に入ってからも文系と理系に分かれています。理系の学生は経済学や政治学を、文系の学生は物理や化学を一般教養でしか学んでいません。私の母校の米オハイオ州立大学で昨年まで副学長(プロボスト)だった人は、学部はイエール大学の英文学、大学院修士はオックスフォード大学の哲学と政治学、博士号はハーバード大学のメディカルスクールで取りました。そういう人が何人も出てくるような教育体系がアメリカにはあるのです。日本では中学生くらいから、自分は文系か理系かを問いかけられていますからね。 永田学長:明治から昭和初期までの旧制中学校は文理横断が当たり前で、寺田寅彦のように理系の先生が文学を書くのも当たり前でした。それを戦後、大学受験が変えてしまいました。高校までの学びが一定レベルに達していれば、今度は大学とのマッチングをどうやっていくかを本気で考えないといけません。 私は英語の試験もしたくないと思っています。大学では全部英語で授業をするようにすれば、英語の試験をしなくても、英語のできる学生が入ってきます。それが、受験生が大学のポリシーに合うかどうかということです。 永田恭介(ながた・きょうすけ)/筑波大学学長。専門は分子生物学、ウイルス学、構造生物化学。東京大学薬学部卒、同大学院薬学系研究科博士課程修了。博士(薬学)。米国留学後、国立遺伝学研究所分子遺伝研究部門助手、東京工業大学(現・東京科学大学)大学院生命理工学研究科助教授、筑波大学基礎医学系教授などを経て、2013年から現職。国立大学協会会長などを務める。 田中愛治(たなか・あいじ)/早稲田大学総長。専門は政治学。早稲田大学政治経済学部卒、米国オハイオ州立大学大学院政治学研究科博士課程修了。Ph.D.(政治学博士)。東洋英和女学院大学助教授、青山学院大学教授、早稲田大学政治経済学術院教授、International Political Science Association(世界政治学会)President(会長)などを経て、2018年から現職。日本私立大学連盟会長、日本私立大学団体連合会会長、全私学連合代表などを務める。
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