「敵国攻撃能力」を備えて日本は何を狙うのか
ただ、それでも成果は得られる。日本が戦略原潜と空母を狙った。その事実だけで戦力分散の効果は期待できるからである。なお、実際には命中は期待してよい。 購入中のJSMミサイルはとくに有望だ。ステルスであり海面高度1メートルを飛ぶため中国警戒網はおそらく突破できる。また画像認識で艦船形式を自動的に判断し、指定艦船の弱点部を精度1メートルで狙うため目標を確実に狙える。 購入を停止したLRASMも同様の機能を持つ。JSMを超える長射程から購入再開の可能性は高い。
トマホークも無力ではない。ステルス性は限定的だが、2000キロメートル超の長射程から迂回攻撃が可能である。海南島北側から探知が困難となる山越え攻撃で南部の海軍基地を狙える。目標が停泊場所を変えても衛星通信で弾着地点を変更できる。 当然だが、ミサイルが命中すれば戦力分散の効果は増大する。中国は海南島や南シナ海防衛に力を注がざるをえなくなるのである。 ■実際に攻撃できるのか 第3は、攻撃実施には特段の困難を伴わないことである。
海南島は既存装備と導入ミサイルで攻撃可能である。最有力は潜水艦からのトマホーク攻撃となる。同ミサイルには魚雷発射管対応型があり、すべての海自潜水艦から発射できる。南シナ海への侵入もそれほど難しくもない。しかも攻撃は奇襲的となる。 ちなみに、海自潜水艦は今の段階でも海南島を攻撃できる。艦船攻撃用としてハープーン・ミサイルを採用しているが、2015年以降に購入したブロック2型は限定的だが陸上攻撃機能がある。
「いずも」級軽空母と空自F-35B戦闘機を使うやり方もある。フィリピンを東回りでスールー海まで進出し、そこからF-35を発艦させマレーシアとの国際海峡であるバラバック海峡経由で南シナ海に送り込む。そのやり方でも海南島は攻撃圏内に入る。 導入ミサイル次第では陸上哨戒機による攻撃も可能となる。P-3やP-1哨戒機とLRASMミサイルの組み合わせなら鹿屋や岩国、硫黄島から海南島を攻撃できる。そのいずれも実施困難ではない。