平安時代の「 デキる上司」は、部下思いのやさしいタイプ? 結果を求める厳しいタイプ⁉ さて、どっち? 【NHK大河『光る君へ』#25】
帝の失敗を自分事として捉える道長。民を最優先に動きたいが立場的に困難な場面も
同じ頃、道長(柄本佑)は民のために左大臣としの仕事に都で忙しくしていました。 道長は安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)から都に凶事が続くだろうと聞かされます。 安倍晴明によると、地震、疫病、日食、嵐、大水の全てが都で起こるというのです。さらに、「災いの根本を取り除かねば何をやっても無駄にございます」と、道長は告げられます。 この“根本”というのが、どうやら一条天皇(塩野瑛久)のよう。彼は定子(高畑充希)を愛するあまり政をおろそかにしていました。鴨川の堤の修繕を早急に行わなければ一大事になると懸念されていたものの、一条天皇は急ぐには及ばずと関心を向けません。さらに、大宰府から戻った伊周(三浦翔平)を身内だからと贔屓したため、実資(秋山竜次)など帝を非難する貴族も出てきました。 一条天皇が政を怠り、定子にぞっこんになっている間、安倍晴明が予言したとおり都が大水に見舞われ、鴨川の堤が崩れて多くの民たちが犠牲になりました。 道長は一条天皇に堤の修繕を繰り返し頼み、帝の許しがないまま修繕に入りましたが、結果的には対応が遅れてしまい、民を守りきれなかったことを悔いています。この事件を「早く修繕を始めなかった私の煮えきらなさゆえ」とし、左大臣の職を退きたいと申し出ます。 道長が政を率いようと思ったきっかけは、最愛の女性であるまひろとした"あの夜の約束"です。しかし、彼はまひろとの約束を守るためだからと、政を私的利用するようなことはありません。このことは、自分の犯した過ちは地位を捨ててでも責任を取ろうという決断にも表れています。 また、一条天皇は民に比較的寄り添っていた時期もありましたが、自分が恋に現を抜かしたせいで、多くの民を犠牲にしたことはさほど気にしていないようです。当時、貴族にとって民は守るべき存在ではなかったため、彼の反応はある意味では自然なのでしょう。 民中心の政を目指し、愚直なまでに誠実な道長は今回の失敗を繰り返さないよう、安倍晴明が予言した都の災いにどのように対応していくのだろうか。次週以降の彼の活躍も期待できますね。 ◆つづき◆『ある意味、占い師が「最強」だった。平安貴族の1日は、朝の運勢占いをチェックしてからスタート⁉』では、平安貴族のくらしと占いの密接なつながりについて解説していきます。
アメリカ文学研究/ライター 西田梨紗