一歩間違えば大きな接客クレームにつながることも…お客様対応で「正論を述べること」を優先してはいけないワケ【元ルイ・ヴィトン トップ販売員が解説】
クレームには、人と場所を変える
1人でなんとか解決したいという思いから、最初は謝罪してお話を続けていましたが、上司を出せとおっしゃられたため、途中から上司にも対応してもらいました。そして、お席にご案内して、そこでさらにお話をさせていただきました。 自分1人で対応してもなかなかご納得いただけない際には、「人」を変え、さらに「場所」を変えてみることで、お客様も少しずつ落ち着かれることもあります。あとにも先にもこのような大きな接客クレームはありません……。 長く勤めていると、会社や扱う商品に対して愛情たっぷりになり、お客様から否定的な言葉を言われると、全力で戦いたくなってしまうこともあると思います。しかし、私たち販売員は、お客様に寄り添うことを優先すべきです。 このときのお客様はのちに再来店され、ご希望の商品をお買い求めくださったのですが、不愉快な思いをさせてしまい、心から申し訳なかったと思っています。 また、このような販売員の態度や発言に対する「接客クレーム」がある一方で、商品不具合に対する「商品クレーム」もありますよね。商品クレームの場合、正直自分ではどうすることもできない場合が多いため、社を代表してお詫び申し上げるというスタンスで対応します。 しかし、会社側の立場しか見えなくなり「私たちはクレームには屈しません!」という態度を貫いてしまうと、「商品クレーム」から始まった話が「接客クレーム」となって、なかなか消せない大火事になってしまうこともあります。 どのようなクレームでも、お客様がどの部分に対して残念だと思っているのか、どの部分にご立腹されているのか、それをしっかりと理解し、お客様の立場だったら、と考えることが大切です。 お客様の話を伺いながら、「たしかに、私もお客様の立場だったらそう思うかもしれない」と感じるのであれば、それをお伝えすることがあってもいいと思います。「たしかに、この部分が痛んでくるなんて想像もしなかった、とおっしゃるお客様のお気持ちもよくわかります」というように。 「おっしゃることはしっかりと理解しました。そのうえでできることとしては……」と、気持ちに寄り添ったうえで、こちら側の意向を伝えることで、お客様にもご理解いただけるのではないでしょうか。 土井 美和 株式会社Clienteling Advisory 代表取締役
土井 美和