成海璃子が誕生日迎える 「瑠璃の島」から19年…キャリアに裏打ちされた振り幅の広い演技で魅了 ディズニー作品での“生真面目”な弁護人もハマり役
俳優・成海璃子が8月18日に32歳の誕生日を迎えた。5歳の頃から子役として活動を始めているので俳優歴も四半世紀以上にわたっている。誕生日をきっかけに、これまでの活動と俳優としての魅力を掘り下げてみたいと思う。 【写真】笑顔がキュート!成海璃子の“素”の表情に癒やされる ■「TRICK」主人公の幼少期役でドラマデビュー 1997年にセントラル子供劇団に入団し、子役として活動を開始した成海。2000年7月から放送された仲間由紀恵と阿部寛のW主演によるドラマ「TRICK」(テレビ朝日系)において、仲間が演じる自称天才マジシャン・山田奈緒子の少女時代を演じ、回想シーンに登場した。これがドラマデビューとなった。2002年に公開された映画「トリック劇場版」にも出演しているが、この作品では“琴美”という別の役だった。 2004年に所属事務所を移籍し、それを機に活躍の場も広げることとなった。2005年4月から放送された「瑠璃の島」(日本テレビ系)でドラマ初主演。沖縄・鳩間島をモデルにした島が物語の舞台で、過疎化が進み、小学校が廃校になりそうなとき、小学校を存続させるために施設で育った少女・瑠璃(成海)が里子として島に連れて来られ、島の人たちとの出会いを通して成長していく姿が描かれている。人間不信な瑠璃は島の人とすぐに打ち解けることはできなかったが、自殺するために島にやって来た高原信(竹野内豊)に、逆に溺れかけていたところを救われ、2人の運命が変わっていった…。しっかりとしていて大人っぽい一面もありつつ、自己中心的でわがままな子どもっぽい一面もある“瑠璃”を見事に表現し、注目度も一気に高まった。 2005年10月からは木藤亜也氏のノンフィクション書籍「1リットルの涙」がフジテレビ系でドラマ化され、難病を発症する主人公・池内亜也(沢尻エリカ)の妹・亜湖を演じた。優等生の姉をうらやみ、嫉妬する思いから反抗期に入っていたが、姉の病気が進行するにつれて、姉思いの素直な妹になっていく。同級生に病気の姉を馬鹿にされても何も言い返せない弟・弘樹(真田佑馬)を見て、弟の同級生、そして弘樹を叱りつける場面は印象的で感動的なシーンの一つ。2007年に放送されたスペシャル「1リットルの涙 特別編~追憶~」では、実年齢よりも上の看護師になった亜湖を演じている。 映画初主演は2007年公開の「神童」。さそうあきら氏の漫画を実写映画化した作品で、主人公の成瀬うたを演じた。中学生のうたは、言葉よりも先に音符が読めるほどの“天才ピアニスト”。指を守るために球技を禁じられ、学校では孤立気味。そんなうたが、松山ケンイチが演じる“音楽は好きだが才能に恵まれない”音大浪人生・菊名和音(ワオ)との出会いで変わっていくという物語になっている。この作品でも当時13歳には見えない大人っぽさ、落ち着いた雰囲気があり、“孤高の神童”のイメージに合っていた。 同時期に主演映画「あしたの私の作り方」、他にも小出恵介とW主演の「きみにしか聞こえない」も公開された。それら2007年に公開された映画の好演で「第19回山路ふみ子映画賞」新人女優賞を獲得。2008年1月から放送された“ハチクロ”こと「ハチミツとクローバー」(フジテレビ系)に主演し、撮影当時まだ15歳ながら美大生のヒロイン・花本はぐみを演じた。はぐみがハマり役で、成海の印象の変化と広がりを感じさせてくれる作品となった。 ■“コメディエンヌ”としての才能も発揮 2009年公開の主演映画「罪とか罰とか」では、売れない崖っぷちのグラビアアイドル・円城寺アヤメを演じた。ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督によるブラックユーモアたっぷりのコメディー作品で、正統派美少女のイメージが強かった成海が本格コメディーに挑戦し、一つ殻を破り、コメディエンヌとしての魅力を発揮している。2010年は、剣道に青春をかける女子高生を描いた「武士道シックスティーン」、高校の書道部の活躍を描く「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」といった“青春もの”への出演が続き、真っすぐさや情熱を持った主人公をうまく表現した。 その後も、演劇に没頭する高校生たちの青春を描いたミステリー「少女たちの羅針盤」(2009年)、秘密の恋に揺れ動く男女の切なくも耽美なラブストーリー「無伴奏」(2016年)、映画撮影の現場を舞台とした三浦貴大とのW主演ホラーコメディー「ゴーストマスター」(2019年)など、幅広いジャンルで個性に富んだ役を務めてきた。 純粋で真面目で真っすぐ。そういう軸があるからこそ、王道的な自身の正義を貫く役も凛々しく演じられ、コメディー作品ではそのギャップが面白さをより増幅させている。2023年には連続テレビ小説「らんまん」(NHK総合ほか)で芸歴23年にして初の“朝ドラ”出演を果たす。2024年も「隣のナースエイド」(日本テレビ系)と「アイのない恋人たち」(テレビ朝日系)に掛け持ちで出演するなど、俳優としての存在感は年々増している。 活躍の場は地上派ドラマや映画に限らず、配信ドラマにも登場。ディズニーが手掛け2023年12月からディズニープラスのスターで独占配信された実写×アニメ×CGが融合したオリジナル作品「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」にも弁護士・虹咲綾菜役で出演した。同作は現実世界の女子高校生ナギ(中島セナ)と異世界から来た少年タイム(奥平大兼)が運命的に出会い、やがて互いに協力しながら世界の危機に立ち向かっていく物語。現実世界とアニメの世界が交わるハイクオリティーな描写だけでなく、ドラゴン乗りのタイムやアクタ(新田真剣佑)、スペース(森田剛)の激しいアクションシーンも話題になった。 この作品でも成海の生真面目なキャラクターが生きていた。現実世界で伝説のドラゴン乗り・アクタが巻き込まれる事件を担当する国選弁護人という役どころだが、最初はアクタのことを否定していたものの、次第に彼の持つ不思議な魅力にひかれていく。そんなアクタとのやりとりも成海の持つ生真面目さ、綾菜のキャラクターともリンクして、より面白く感じられた。 32歳の誕生日を迎え、今後彼女がどんな演技を見せてくれるのか楽しみだ。 ◆文=田中隆信