静岡県内ひき逃げ続発の1週間、県警が啓発強化 死亡事件摘発100%「安易に逃げれば重大な結果に」
静岡県内でこの1週間、ひき逃げ事件が各地で相次いでいる。浜松市浜名区の市道交差点では10月31日に自転車の女性(25)が左折してきた大型トラックにはねられ、死亡した。県警の摘発率は9割を超え、死亡ひき逃げに至っては今年の現状も含めると13年連続で100%摘発している。高い摘発率にもかかわらず年間100件近く起きているひき逃げ行為の背景には、飲酒、無免許運転の発覚を恐れる心理とともに、「規範意識の低下」が指摘され、県警は改めて啓発の強化を進める。 浜名区の事件で逮捕された袋井市の男(51)は職業ドライバーでありながら、衝突後にトラックから降りず、義務である救護措置や通報をしないで逃げた疑いが持たれている。衝突の認識はあったなどと容疑を認めているが、しばらくの間、自転車をひきずったまま走行していた。勤務先に戻った後、別の車で運送業務を続けたことも分かり、関係者は「救護義務を果たさないのは、救える命を見捨てるということ。プロの意識と重大性の認識が欠如していたのでは」と憤る。 4日までの今年のひき逃げ発生件数は74件で、摘発は69件。死亡の3件は沼津市と静岡市葵区、31日の浜名区の事件で、いずれの容疑者も逮捕している。 重傷10件のうち9件を摘発。残り1件は、浜松市中央区の市道交差点で11月1日、自動車が高校生のミニバイクに衝突して同乗者とともに重傷を負わせ、逃走している事件。軽傷は61件中57件を解決済みで、三島市で10月31日に女子児童(6)とぶつかった乗用車が逃げた事件は、発生から2時間後に容疑者を逮捕した。 2023年の県内のひき逃げ発生は96件で、3年連続で100件を割った。摘発率は94・8%(91件)で、過去10年で3番目に高かった。県警交通企画課によると、防犯カメラやドライブレコーダーの普及もあって近年の摘発率は高止まりし、死亡ひき逃げの容疑者は全員逮捕している。一方で、毎年の発生件数に大幅な減少はみられない。 同課によると、ひき逃げ行為は負わせたけがの程度などにかかわらず、刑事処罰に加え、一発で免許取り消しの行政処分となり、最短でも3年間は再取得ができない。県警が逃走の動機を聞くと、飲酒や無免許の発覚を恐れた容疑者が毎年一定数いて、「怖くなった」「大したことはないと…」「急ぎの用事があった」との回答も多い。 長倉隆一理事官は「安易に逃げれば重大な結果を伴う」と強調。目撃通報などの協力加速は抑止につながるとし、「プロはもちろん、全てのドライバーが行為の悪質性を認識する必要がある」と各方面への啓発に注力する考えを示した。
静岡新聞社