高校生が企画した地域の文化祭 「地域の賑わいづくりに繋げたい」200名以上が来場した“丸亀大文化祭”の舞台裏に迫る
6月8日に丸亀市西平山町のみなと公園で初めて「丸亀大文化祭」が開催された。多くの地域住民が来場し賑わい、そのステージやテントの中心には高校生たちの姿が。それもそのはず、このイベントを企画したのは、丸亀市内の高校生有志たちなのだ。実行委員長の石橋由衣さんは丸亀市出身で現在藤井高等学校に通う3年生。企画の経緯や今後の展望などを伺った。 【写真5枚】当日のステージの様子 2023年3月25日、26日に丸亀市市民交流活動センターマルタスで開催された、丸亀市内の高校生を対象とした「まるがめ地域活性化プランコンテスト」 このコンテストに同級生3人でチームを作り、チャレンジしたことがすべての始まりだったという。 「担任の先生に『普段の学校生活で感じている息苦しさを、みんなに共有してみたらどう?』とコンテストへの出場を薦められました。学生って関わる大人が先生と家族以外あんまりいなくて、学校や家の外の世界がどうなっているか分からない。だから、視野が狭く固定概念に囚われがちで、人脈も広がらないから選択肢も少ないことを危惧していました。学校や家とは違うサードプレイスがあれば、普段の学校生活では出会わない人と出会って新しい考えや選択肢を知り、視野が広がり、新しい発想や発見につながるのではと思っていました」 もともと、学校をよりよくする活動に取り組んでいた石橋さん。不登校になった同級生から話を聞き、欠席により授業内容が分からなくなったことで、より学校に行きにくくなるという負の連鎖を防ぎたいと思うように。授業のノートなどを撮影し、欠席した生徒にLINEで送付する活動など、具体的な行動を起こしていた。生徒会役員にも立候補して精力的に活動していたが、その中で学校をよりよくするだけでなく、学校外にも居場所があればいいのではと考えるようになっていった。 「コンテストは、2日間の中でフィールドワークなどを通して地域の実情を学び、そこからプランを練って最終日の午後に発表するというものでした。その中で各チームが考えているプランを見ていると、高校生と企業・行政などの地域社会との繋がりができていないと、実現可能性が見えないものが多いと感じたのです。そこで、まずは高校生と地域社会が繋がり、関係性を深めるきっかけとなるものが必要だと感じ、そこで丸亀大文化祭を構想しました。この機会が、学校外の居場所にもなるんじゃないかと思いました」 当時、新型コロナウイルスの影響で他校の文化祭に遊びに行くことができなかった。高校生活の象徴的なイベントである文化祭を、地域全体で楽しむことができたらという思いも背景にはある。丸亀市内の公立・私立計6校の高校生が企画し、行政や地元企業などの大人がその企画内容に対してフィードバックをしたり、ブラッシュアップをしたりとサポートするという構図。そして屋台、各校の部活動などが発表するステージ、丸亀市内の高校への進学を検討している小中学生向けの制服試着会などのコンテンツも考えた。 「企画を考える中で、ただ大人に助けてもらって自分たちが楽しんで終わりというのも違うなと思いました。そこで、賑わいづくりという要素を取り入れることにしたのです。このイベントが地域の賑わいづくりに繋がれば、丸亀に関わるすべての人にとって良いことになると思いました。丸亀は、港のエリアと丸亀城を中心とした地域と南部の住宅地のエリアに分かれると思います。その中で、港のエリアってあんまりみんな縁がないなと感じていました。でも、歴史を辿ると、金毘羅街道の入り口として全国各地から多様な人々がやってくる場だったんです。そんな場所が、現代ではあまり注目されていない現状が気になり、丸亀大文化祭を通して、かつての港の賑わいを取り戻したいと思いました」 このプランは、コンテストで最優秀賞に選出された。プランだけで終わらせたくないと思っていた石橋さんが、この企画を実現させたいと、コンテストの主催者である四国家サポーターズクラブに協力を打診したところ快諾された。市内各校に出向いて仲間集めを行い、藤井高校・丸亀高校・丸亀城西高校・大手前丸亀高校・飯山高校・村上学園高校から約50人の高校生が集まった。 「高校生が大人たちと1から作り上げたイベントが、こんなに大きなイベントになってとても嬉しかったです。大変だったことももちろんあり、来場者や参加者集めは苦労しました。特に未成年の主張というコンテンツでは、なかなか主張をしてくれる方が集まらずに、なんとかメンバーの知り合いに声をかけまくって集めました。でもそうした過程で、学校や世代を超えて高校生と大人が関わり、さまざまな考えや視点をもった仲間と出会えたことが本当に良かったと思います」 当日は200名程度の方が来場し、高校生が作ったうどんと丸亀製麺が作ったうどんの食べ比べや、ミニチュア丸亀城作りワークショップ、世代別投票や高校生考案のオリジナルピンチョスのキッチンカーなどのさまざまな企画が行われた。 「今回、初回としては成功だったと思いますが、ステージでの企画でお客さんが退屈してしまう時間ができてしまったなとか、昼の時間帯は食事をしながら楽しめる企画があったらよかったなとか、もっとできることがたくさんあると感じています。ぜひ第2回も開催して恒例行事にしていきたいと思います」 高校生が企画して、地域で文化祭を行った事例は全国初という。かつて、人々の交流の拠点は港であり、万物は海によって運ばれた。その海運の神様を祀る金刀比羅宮へと至る玄関口で、多世代交流の場づくりにチャレンジする石橋さん。これは必然か、はたまた偶然か。丸亀の高校生たちの今後に目が離せない。
谷村一成