日本の動画コンテンツ市場、どう勝ち抜くか(7完)フジテレビジョン
若い層との接点をつくるネット動画配信
──ネット配信は、若者の「テレビ離れ」に歯止めをかける効果があるのでしょうか。 山口 「若者離れの歯止め」というよりも、若い層との接点をつくれるという点で、FODは効果を発揮しています。実際、視聴者中、約28%をF1層(20~34歳の女性)が占めています。テレビの受像機は世帯数と同じ程度だと思いますが、それにパソコンやスマートフォンをプラスすると、人口の数を超えるはずです。しっかりとニーズにかなう動画コンテンツをつくっていれば、テレビの全盛期よりも視聴者が増えるのではないか、と夢見る時があります。私たちテレビの局員は皆、制作した動画コンテンツを一人でも多くの人に伝えたい、見てもらいたい、という思いを抱いているのです。その思いをかなえるにはどうすればよいかを考えれば、おのずと答えは出ます。テレビやFOD、BS放送のBSフジ、CS放送のフジテレビONE・TWO・NEXTを含めて、当社はこれから、あらゆる伝送路を使って動画コンテンツをお届けする企業になっていくでしょう。
発想を変えればテレビはなくならない
──日本の動画コンテンツ市場の未来はどうなると予測していますか。 山口 AmazonやNetflixの展開が本格化した頃は、日本市場が戦国時代に入ったというイメージを抱きました。日本や中国の歴史を振り返ると、戦国時代に入り、競争を経て、天下を統一する国家が現れます。同じように、市場の中で厳しいサバイバル競争が起きるのではないかと思っていたのですが、今のところそうはなっていないようです。競合する動画配信サービス会社同士が統合を検討したとしても、システムの統合や主導権をどちらが握るのかも含めて実務面でハードルが高く、実現は難しそうです。視聴者のニーズが多様化する中、1社だけであらゆるニーズをカバーするのはとても困難です。2020年代から2030年代前半にかけては、5~7つのグループがしのぎを削る時代が続くのではないでしょうか。 ──その時、テレビ局はなくなっていませんか。 山口 地上波のテレビ放送に閉じこもってサービスを展開するなら、厳しい戦いが待っています。さまざまな伝送路を使って視聴者に動画コンテンツを見てもらおうと力を尽くせば、良い戦いができるでしょう。このように発想を変えれば、テレビはなくなりません。 (取材・文:具志堅浩二)
▼プロフィール 山口真(やまぐち・まこと)1962年生まれ。1985年株式会社フジテレビジョン入社。報道局、編成局編成部、映画事業局、編成局担当局長などを経て、2015年7月に総合事業局コンテンツ事業センター コンテンツ事業局長に就任。